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 世界中で大きな盛り上がりを見せているMOOC(Massive Open Online Courses)。この分野のキーパーソン3人によるパネルディスカッションが、2013年10月22日、東京・渋谷で開催された。MOOCの代表的なプラットフォーム「Coursera」を運営する米コーセラのアンドリュー・ング共同設立者・共同最高経営責任者、MOOCを大学教育に活用している米サンノゼ州立大学のモハマド・H・カヨーミ学長、2013年9月からCourseraで講義の配信を始めた東京大学の江川雅子理事である。MOOCの現状と可能性について、それぞれの立場から意見が出された。

 MOOCとは、大学がインターネットを通じて講義を無料公開する取り組みのこと。「大規模公開オンライン講座」などと訳される。Courseraや「edX」「Udacity」などのプラットフォーム上で、世界の有名大学がこぞってMOOCの配信を始めている。MOOCをテーマにした今回のパネルディスカッションは、NHKが主催する教育向けコンテンツの国際コンクール「日本賞」の関連イベントとして行われた。

学習者の膨大なデータで教育を改善

 今や500万人を超えるユーザーを擁するCoursera。同社のング氏は、MOOCがこれほど多くの支持を集める理由を「MOOCが実際の“講座”だから」と話す。大学の講座と同じように、定期的に講義が行われ、宿題が課され、一定の成績を修めると履修証も得られる。履修証は、「米国では価値のある証明書として認められている」(ング氏)ため、就職の際の自己アピールに使うことも可能だ。

 またMOOCでは、学習者の膨大な学習履歴がデータとして蓄積される。どの講義が支持されているか、学生がどんなレポートを書いたか、掲示板で誰が質問をして誰が答えたか、といったデータだ。その量は「5000年の教育の歴史の中で蓄えられてきた全てのデータよりも多い」(ング氏)というほどだ。

 こうしたデータを基に得られる知見は少なくない。例えば、学習者がつまずきやすい箇所を把握しやすい。小規模なクラスの1~2名が間違っても教員はそれに気付きにくいが、学習者の総数が数万人規模になれば、誤る学習者の数も相当数に上るため、目に留まりやすい。こうしたデータを、個別学習の実現に生かせる可能性があるという。

 学生をやる気にさせるためのヒントも見えてきた。ング氏は、講義の受講者に毎週メールを送り、次回の課題の提出期限を告知してきたが、そのメールの書き方で課題の提出率が変わることが分かった。メールの冒頭で課題を告知するのでなく、前回の講義や課題に関する優れた成果について褒めてから、「ちなみに次回の課題はいつまでに提出してほしい」と書く方が効果が高いという。「これは最初は分からなかった。数十万人の学生に何度もメールを送って初めて、学生を元気づけて励ますことが大事だ、ということが分かった」(ング氏)。蓄積されたデータが教育の改善につながること、現在そのための研究をしていることを説明した。