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 教育とICTの学会「2014 PCカンファレンス」(主催:コンピュータ利用教育学会、全国大学生活協同組合連合会)が2014年8月8~10日の3日間、北海道の札幌学院大学にて開かれた。2日目と3日目は、学生の初年次教育や授業評価、市民参加教育や教材開発といった研究成果を発表する分科会が開催された。そのいくつかを紹介しよう。なお、分科会で発表された論文集は2014 PCカンファレンスのWebサイト写真1)からダウンロードできる。

意外と低い新入生のPC操作スキル

 「ネット世代の学生の多くはキーボード操作が不得意」。名古屋学院大学教務部の児島完二部長は、新入生のキーボード操作スキルの調査結果を発表した(写真2)。タイピングスキルを測るサービス「e-typing」を使い、同大学の新入生1300人のスキルを調べた。

 e-typingの場合、点数が200 ポイントを超えればビジネスパーソンとして何ら困らないレベル、100 ポイントに満たないとキーボードの配置を理解していない場合が多いという。児玉部長が調査したところ、入学直後の平均スコアは104.9ポイントで、半数以上(56.6%)の学生が100ポイント以下だった。約2カ月の練習で平均点は140.4ポイントに上昇したが、それでも4人に1人(約25%)は100ポイント以下だった。「今時の学生はスマホを当たり前に使っているし、高校では教科情報も学んできている。そのため、新入生はPC操作ができると思いがちだが、実際は違う。教える側は認識を改めた方がよい」と児島部長は指摘した。

 名古屋工業大学グリーンコンピューティング研究所の田中雅章研究員も、新入生のPCスキルに関する調査結果を発表した(写真3)。ある短期大学の新入生を対象にWordやExcelの操作スキルについて調査したところ、次のような結果を得たという。例えば、Excelの基本操作については、半数を超える57.6%が「できない」または「あまりできない」と回答。計算式・関数にいたっては、半数が53.2%が「できない」、29.5%が「あまりできない」と回答した。

 田中研究員は「レポート作成や研究活動を行うには、PC操作スキルの底上げが不可欠」と言う。ただし、「学びの意欲を高める工夫も必要」と続けた。その方策の一つが、「卒業した先輩(この場合は栄養士など)が仕事で実際にPCを活用している姿を見せること」
と同氏は強調する。実際に先輩が行う仕事(栄養指導)の動画を学生に見せたところ、ExcelやPowerPointなどの習得意向が大きく改善した調査結果を示した。

クラウド型教材を活用した授業を実践

 獨協大学経済学部の立田ルミ教授は、学生のクラウドサービス活用状況の調査結果や、授業でクラウド型の教材を活用した実例を紹介した(写真4)。同学部の新入生約800人は、ほぼ100%スマートフォンを所有しているという。クラウド型のコミュニケーションツールの活用度も高く、「LINE」はほぼ100%、「Twitter」は8割弱、「Facebook」は4割弱といった具合だった。一方、電子書籍の活用は進んでいない。回答者の45%が「使わない」と回答したという。

 こうした学生に対して新たな学びの形を探るため、立田教授はクラウド型教材の活用を始めている。分科会ではその活用状況を紹介した。立田教授が採用したのは、日経BP社の教育機関向けコンテンツサービス「日経パソコンEdu」である。最新の情報をいつでもインターネット経由で見られることを重視してクラウド型教材を選んだという。

 授業ではテスト機能を使ってリアルタイムに学生の理解度を把握し、それをその場で学生たちにフィードバックしながら授業を進めている。学生たちは「随時追加される最新のキーワードに関するテストなどに特に興味を持って取り組む」と立田教授は説明する。「クラウド型教材はスマートフォンやタブレットを使って通学中にも読める。電車の中などあいている時間にも学習することを期待したのだが、現在は授業中の利用がほとんど。授業外での学習をいかに増やすかが課題」(同)と言う。

新たなコンテンツデザイン力が求められる

 教育におけるICTの適用範囲は広い。「教育はもちろんのこと、文化や芸術、産業、医療といったあらゆる領域において、映像(2D)や立体視(3D)、拡張現実感などの先端インターフェイスによる新たなコンテンツデザイン能力がもっと必要になる」と佐賀大学の穂屋下(ほやした)茂 教授は強調する(写真5)。佐賀大学地域環境コンテンツデザイン研究所の所長も務める同氏は、「佐賀大学コンテンツデザインコンテスト」の取り組みについて紹介した。

 このコンテストは2012 年から開催され、今年(応募期間は2014年9月15日まで)が3回目。エントリー作品数は2012年が63件、2013年が118件と急増している。「特に2012年は動画作品が多く、2D や3DCGのアニメーション、ショートムービーなど多彩な作品が揃った」(穂屋下教授)。

 こうしたコンテンツデザインコンテストがもたらす大学教育への効果としては、「新しい美術コンテンツへの挑戦、目覚め」「他者のプレゼンに影響されて自身のプレゼン技術のレベルアップ」「自己満足的視点の作品から一般視聴者を意識した客観的作品へ」「審査員やコンテンツ制作関係者からの助言や指導による向上心」などがあると、穂屋下教授は言う。「単なるICT 作品のコンテストに留まらず、能動的・主体的学修の場を推進するもの。大学教育にもたらす効果は非常に大きい」という。

 ここまで分科会の一例として、四つの分科会を紹介した。いずれも終了後には参加者から多くの質問が寄せられ、活発な議論が行われた。PCカンファレンスで取り上げられる教育とICTに関連する論文は幅が広く、ユニークな取り組みも数多い。是非、ほかの論文にも目を通してみることをお勧めする。分科会で発表された論文集は2014 PCカンファレンスのWebサイトからダウンロードできる。