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 教育とICTの学会「2014 PCカンファレンス」(主催:コンピュータ利用教育学会、全国大学生活協同組合連合会)が2014年8月8~10日の3日間、北海道の札幌学院大学にて開かれた。最終日の8月10日には、教育とICTの今後を議論するセミナーが開催された。その中の一つ「高校生に聞く!こんな情報教育が受けたい」と題したセミナーでは高校生4人が登壇。聴講者である研究者や教員に対し、情報教育の改善策を提言した(写真1写真2)。4人の高校生が共に訴えたのが、「先生が生徒に一方的に教える授業スタイルの改善」である。

「もっと実践的に、もっと体験の場を」

 留学経験のある坂東風香さん(北海道札幌旭丘高等学校)は、「日本の学校では日常的にPCを使わない。そのため、PCを使った授業を難しく感じるクラスメイトが多い」と言う。坂東さんが留学していたエジプトのインターナショナルスクールでは、多くの生徒がノートPCを持ち歩き、様々な授業や休み時間に使っていたという。もちろん、そうした環境はすぐに日本では作れない。そこで坂東さんは「情報の授業で必ずしもPCを使う必要はないのではないか。まずは苦手意識を無くすことが重要。慣れ親しんでいるスマホを活かした授業があってもよいのでは」と提言した。

 同じく留学経験のある工藤凜太郎さん(広尾学園高等学校)も、座学中心になりがちな授業の問題点を指摘する。「聞いて書いて覚えるのではなく、自分の意思で興味を持って行動できるような授業が求められている」と主張した。その方策の一つとして工藤さんが挙げたのが、3Dプリンターを活用した授業だ。「実際に触れるモノがあれば、これまで関心を示さなかった生徒も好奇心を持てるはず」と言う。さらに「そうした活動やコミュニケーションを通して、自分が世界とつながっていることを感じ取れる授業があるといい」とも語った。

 早稲田大学高等学院の横田一城さんも、「より実践的な授業をしてほしい」と強調した。例えば、情報モラルの授業であれば、「仮想空間でウイルス感染をシミュレーションしてみたり、パスワードを解読したりしてみる。そうした実体験を通した方が、情報モラルへの理解も深まる」と言う。また、デジタル時代の著作権については「コピー&ペーストを判定するツールを生徒が実際に使ってみてはどうだろうか。どれだけ簡単に自分たちのコピペがバレるのかを体感すると認識も変わるはず」といったアイデアも披露した。

プレゼンを通して様々なスキルを高められる

 「ICTを活用したプレゼンテーションの場をもっと設けるべき」と提言したのは、東京学芸大学付属高等学校の今戸優理さんだ。この提言のポイントは、プレゼンテーションを企画してから実践するまでの過程で、様々なスキルを高められる点にある。

 プレゼン相手の情報ニーズを探る、プレゼンの企画や筋道を立てる、関連する情報を収集したり利害関係者(使用する音楽やデータなど)に使用許諾を得る、プレゼン資料や動画を作成するなど、「プレゼン一つ仕上げるにも様々なスキルが必要。情報教育でもプレゼンの機会を増やすとよいのではないか」と今戸さんは言う。

 今回登壇した高校生の意見はほんの一部で、ほかにも様々な意見があるだろう。とはいえ、高校生は自分なりに情報教育に対する課題や改善案を持っているのは事実。高校における情報教育をより良くするため、こうした現場の声を教育機関や教職員がどう活かすか、活かせる体制をどう作れるかが、今後、問われていきそうだ。

ICT活用で地域格差や経済格差を無くす取り組みも

 学会最終日には、このほかにも三つのセミナーが開催された。その中の一つ「高校の情報教育~大学入学時のメディアリテラシー教育にギャップはあるのか?」では、高校生の受験勉強における格差(地域格差、経済格差)を無くすための取り組みや、大学入学者のICT関連スキルを高めるための事例などが紹介された。

 格差を無くす取り組みとして紹介されたのが、NPO法人manaveeの活動だ。学生を含むボランティアが、受験に役立つ動画講座を無料で公開している。インターネット環境さえあれば、誰でも受験勉強に役立つコンテンツを閲覧できる。2014年8月10日時点で8886本のコンテンツが配信されている(写真3)。

 阿部侑麿manavee北海道支部代表は、「無料だから質が低い、という批判を受けることがよくある」と打ち明ける。「でも、本当にそうだろうか。話が上手であることも重要だろうが、“受験生が教えてほしいと思う好きな先生がいる”ことも授業の質につながるはず。今後、さらにコンテンツを増やしていきたい」と語った。

 名古屋工業大学工学部の浅川美沙紀さんは、高校で学んだ情報スキルと大学で求められる情報スキルのギャップを埋めるための施策として、大学生協学生委員の活動を紹介した(写真4)。その一つが、新入生向けに行っているパソコン講座だ。「学生が講座を作り運営することがポイント。先輩の体験を基にするから、実際に必要なスキルだけ学べる。経験も語れるから、生徒はそのスキルの必要性を感じることができる」と説明した。

■修正履歴
文中「工藤凜太郎」さんのお名前に誤植がありました。本文は修正済みです。お詫びして訂正します。[2014/08/11 19:20]