将来のサーバールームを占めるプロセッサーは、CPUではなくグラフィックスチップ(GPU)になるかもしれない。グラフィックスチップをサーバーに使おうという動きが始まったからだ。グラフィックス処理ではなく、流体シミュレーション、気象予測、画像認識、データベースからのデータ抽出、財務分析、医療データ生成、といった広い分野に、グラフィックスチップを応用しようとしている。
サーバーにCPUの代わりにグラフィックスチップを
グラフィックスチップに、ゲームの中の物理シミュレーションをやらせる。この間までは、そんな話だったのが、今度はサーバーだ。サーバーセンターのラックに、CPUではなくグラフィックスチップを詰め込んで、サーバーアプリケーションを走らせようという話で、業界は盛り上がっている。これまで、サーバーで走らせていたアプリケーションこそ、グラフィックスチップに向いているのだという。
ゲーム中の物理演算をグラフィックスチップで、というストーリーは分かりやすかった。ゲームでは、元々グラフィックスチップが重要なので、物理シミュレーションもその延長に見えたからだ。でも、これまで高性能グラフィックスチップとは無縁だったサーバーで、CPUの代わりにグラフィックスチップを使おうという話にはかなり違和感がある。
ところが、グラフィックスチップメーカーは本気だ。NVIDIAはグラフィックスチップを使ったサーバー製品ライン「TESLA(テスラ)」を発表。AMDもCPUとグラフィックスチップを統合した「Fusion(フュージョン)」プロセッサーが、電力効率を重視するサーバーに搭載されるだろうという。
そして、Intelまでもが、グラフィックスチップ的な特徴を持つと推定される新CPU「Larrabee(ララビー)」を開発している。PC業界の最大のプロセッサーメーカー3社が、グラフィックスチップまたはそれに似た新型プロセッサーを使ったサーバーで激突しつつある。
もちろん、サーバーアプリケーションなら何でもグラフィックスチップで効率的に処理できるわけではない。それどころか、冒頭に挙げたような、科学技術分野や特殊な解析業務でしかグラフィックスチップは効果がない。
「なんだ、狭い分野じゃないか。大騒ぎすることはない」と思うかもしれない。ところが、この分野が、実は非常に重要なのだ。というのは、これが、コンピューターの応用分野の中で、最も演算性能を必要とする「重い」アプリケーション分野だからだ。そして、将来は、ますますこの分野のアプリケーションが増えてゆく可能性が高い。それも、サーバーアプリケーションだけでなく、PCアプリケーションにまで広がる可能性がある。
つまり、グラフィックスチップサーバーは、特定分野サーバー市場を狙った戦略ではなく、未来に予想される巨大市場アプリケーション市場への前哨戦なのだ。
そして、この分野のアプリケーションなら、グラフィックスチップはCPUよりずっと効率的に処理できる。だから、CPUをグラフィックスチップに置き換えると、格段に効率が上がる。理由は簡単で、グラフィックスチップの方がCPUより演算性能が圧倒的に高いからだ。
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| NVIDIA、Intel、AMDのアプローチの違い |
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