PR

 CO2削減をはじめとする環境対策は、IT部品・機器の製造現場でも例外なく求められている。各メーカー、各施設とも独自の工夫を凝らしている。今回は、北海道という立地を生かし、冬場の外気を利用したり、クリーンルームに独自の設計を取り入れたりといった工夫により、環境への対応を進めている工場の例をレポートする。

 セイコーエプソンの千歳事業所は、プロジェクター製品に用いられる高温ポリシリコンTFTパネル(HTPSパネル)を製造する施設である(写真1)。北海道の空の玄関、新千歳空港にほど近い工場だ。HTPSパネルは従来のアモルファスシリコンTFTや低温ポリシリコンTFTと比べて、画素ピッチを3~20倍程度に縮小した高密度パネル。このため同じ解像度、画面サイズでの表示を、より小さいパネルで実現できるという特徴を持つ。千歳事業所は2005年に稼動した。

写真1 北海道の空の玄関、新千歳空港の脇にあるセイコーエプソン千歳事業所
写真1 北海道の空の玄関、新千歳空港の脇にあるセイコーエプソン千歳事業所
[画像のクリックで拡大表示]

 千歳事業所は、北海道に立地するという特色を生かして、環境負荷の削減を図っている。例えば、機械の動作により発生する熱などを排出するため、施設内を冷却水が循環する設備を備えている。事業所内を循環してきた冷却水は、事業所棟のすぐ脇に建てられた蓄熱槽に貯められ、ここで冷却される(写真2)。この際、通常は強制的に冷却するため電気を利用するが、冬季の3カ月間は外気を使うだけで十分に冷却できる。このため、冷却に要するエネルギー消費を抑えられる。

写真2 工場脇に設けられた蓄熱槽。容量は2000トン
写真2 工場脇に設けられた蓄熱槽。容量は2000トン
[画像のクリックで拡大表示]

 製造時に使う工業用水についても、屋上に設置された室外機から外気を取り込んで温度管理している(写真3)。ところが冬場は室外機の空気の取り込み口が凍ってふさがってしまうことがある。こうした場合は、施設内の暖かい空気を外に向けて吹き出すことで、氷を融かすといった仕組みを設けている。

写真3 工業用水の冷却装置。冬季はこの室外機のエアダクトが氷でふさがれてしまう。そこで、工場内の暖かい空気を逆流させて外に吹き出すことで、凍結対策としている
写真3 工業用水の冷却装置。冬季はこの室外機のエアダクトが氷でふさがれてしまう。そこで、工場内の暖かい空気を逆流させて外に吹き出すことで、凍結対策としている
[画像のクリックで拡大表示]

 エネルギー消費の抑制という点では、クリーンルームの設計にも独自の工夫を加えている。

 クリーンルームの空気清浄度には規格があり、半導体を製造する設備の場合、ちり、ほこりの量が1立方メートル当たり1個しか許されない、クラス1であることが求められる(JIS規格の場合は0.1マイクロメートル以上の粒子が対象。1マイクロメートルは1000の1ミリ)。一般には、クラス1をクリーンルーム全体で実現するように設計するケースが少なくない。これに対して、HTPSパネルを製造するためのベースとなるウエハーを収容するキャリアーを工夫し、この内部でクラス1を達成するようにした(写真4)。これに合わせて、加工する工作機械もキャリアーからウエハーを取り出し、加工するために必要なスペースに限定してクラス1の部分を設ける。このように必要な部分だけに絞ってクラス1を維持するように設計したことにより、必要なエネルギー消費を抑えている(写真5)。

写真4 HTPSパネルのウエハー12枚を運ぶためのキャリアー。この内部で空気清浄度の最も厳しい規格であるクラス1を実現するようにした。このため、クリーンルーム全体ではなく、局所的にクラス1が維持されればいい
写真4 HTPSパネルのウエハー12枚を運ぶためのキャリアー。この内部で空気清浄度の最も厳しい規格であるクラス1を実現するようにした。このため、クリーンルーム全体ではなく、局所的にクラス1が維持されればいい
[画像のクリックで拡大表示]

写真5 HTPSパネルを製造するクリーンルーム。天井のレールから吊り下げられたキャリアーが、製造工程に応じた工作機械までウエハーを運搬する
写真5 HTPSパネルを製造するクリーンルーム。天井のレールから吊り下げられたキャリアーが、製造工程に応じた工作機械までウエハーを運搬する
[画像のクリックで拡大表示]

 セイコーエプソンでは、こうした対策によりCO2排出量を削減することで地球温暖化対策に取り組むほか、デバイスの小型化を進めることで鉱物資源の消費も抑えていく方針。現在のところ「年率5%でCO2排出量を削減している」(経営戦略室信頼経営推進部(環境担当)部長の田中 規久氏)が、これらの対策を強化、拡大することで、さらに環境対策を進めていくという。