グラフィックスチップの将来は、デュアル化にある。CPUがデュアルコアになったのと同じように、グラフィックスチップはデュアルダイ(半導体本体)へと向かっている。少なくともAMDは。なぜ、AMDのグラフィックスチップはデュアルダイへと向かうのだろう。
製造コストが高騰しているハイエンドチップ
まず第一の理由は、コストを下げること。財政事情の苦しいAMDにとって、最大の課題は製造コストを下げて、儲かるグラフィックスチップを作ること。そのために、AMDは「Radeon HD 3870 X2」(開発コード名はR680)に続いて、R7xx世代でもデュアルチップをハイエンドに持ってくる。今回も、ミッドレンジ向けの「Radeon HD 4800(RV770)」を2個搭載した、デュアルチップ構成のハイエンド製品となる。
デュアルダイは、ぱっと見ると“その場しのぎの応急措置”に見えるかもしれないが、そうではない。実は、AMD幹部は、2007年前半から、グラフィックスチップのデュアルダイ化を熱く語っていた。デュアルダイ化は、AMDにとって確固とした戦略だ。なぜなら、コストを大きく下げられるからだ。
グラフィックスチップメーカーは、DirectX 9世代以降、大まかに言って3種類のグラフィックスチップを作ってきた。一番上のエンスージアスト向け、その下のパフォーマンス&メインストリーム向け(ミッドレンジ)、そして一番下のバリュー向けだ。それぞれ性能が異なり、ダイサイズ(半導体本体の面積)が違う。そして、最上位のエンスージアスト向けは、性能競争のために肥大化を続け、DirectX 10世代では、ダイサイズが400mm2を超えてしまった。ハイエンドサーバーCPUクラスのサイズだ。
チップでは、ダイが大きくなると、製造コストが跳ね上がる。大きなダイでは、1枚のウエハーから採れるダイの数が減る。さらに、1個のダイに欠陥が含まれる可能性が増えるため、良品の率(歩留まり)も悪くなる。そのため、ダイが2倍の大きさになると、良品の率は2分の1よりもっと悪くなってしまう。