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 IntelのメニーコアCPU「Larrabee(ララビー)」の実態は、CPUを発展させたデータ並列プロセッサーだ。Larrabeeはさまざまなアプリケーションに対応するが、Intelは、まずグラフィックスボードとして販売する。Larrabeeは、NVIDIAやAMD(旧ATI)のグラフィックスチップに対してどんな利点があるのだろう。

世界のトップゲーム開発者が
Larrabeeの方向性を絶賛

 日本のゲーム開発者を集めたカンファレンス「CEDEC」で、「Unreal Engine」を開発した米国を代表するゲーム開発者ティム・スウィーニィ氏は、プログラマブル化する3Dグラフィックスが新しい世界を開くと講演した。これまでの、プログラム性の低いグラフィックスチップに依存した3Dグラフィックスは、どれも似たような絵となってしまい、独創性が出しにくかった。しかし、完全にプログラマブルなハードウエアの上では、自由に全く新しい表現が可能になるという。

 プログラムで実現する3Dグラフィックスという発想は、実は、新しいものではない。ほんの十数年前まで、3DグラフィックスはCPUの上で動くプログラムだったからだ。3Dグラフィックスを専用に処理するハードウエアは、専用ワークステーションだけのものであり、PCでは3Dはソフトウエアで処理していた。

 しかし、当時のCPUの性能は低く、貧弱な3Dしか描くことができなかった。そこで、3Dグラフィックスをハードウエアで処理する、3Dグラフィックスチップが登場し始めた。そこに、DirectXとOpenGLという3DグラフィックスAPIの台頭が重なった。APIが描画のパイプラインを決めて、チップがハードウエアで実装する。そんなサイクルが出来始めた。

 APIの進化とともに、3Dグラフィックスパイプラインはハードウエアに置き換わって行った。ハードウエア処理によって、PCの3Dグラフィックス性能は、ゲーム機を追い越すレベルにまで進化した。しかし、それとともに、もっと自由なプログラム性を3Dグラフィックスに求める声も強まった。CGムービーのように、複雑なプログラムを使えば、もっと柔軟でリアルな絵を描けるからだ。

 そこで、DirectX 8以降、API上のグラフィックスパイプにはプログラム性を備えたステージが設けられ、プログラマブルプロセッサーがグラフィックスチップに搭載されるようになった。そして、DirectX 10では、3Dグラフィックスパイプの半分がプログラマブルになり、チップの半分の面積は、プログラマブルなプロセッサーで埋め尽くされるようになった。3Dグラフィックスは、十数年を経て、再びプログラムへと回帰しつつある。

 この先に見えるゴールは、3Dグラフィックスのフルプログラマブル化だ。IntelのLarrabeeが狙っているのは、まさにそこだ。グラフィックスチップメーカーよりも先に、ほぼ完全なプログラム性を持つプロセッサーを作り出し、より先進的な3Dグラフィックスを実現することがLarrabeeの目的の半分だ。もう半分は、そのハードウエアで3Dグラフィックス以外の処理を高速に行うことにある。

PCゲームの主流の3Dグラフィックスのレンダリングパイプラインは、時代とともに変化してきた。元々はプログラマブルなCPU上で自由にソフトウエアレンダリングを行っていたものが、グラフィックスチップでの固定されたパイプラインに変わった。そして、今、再びプログラマブルなレンダリングへと戻りつつある。
PCゲームの主流の3Dグラフィックスのレンダリングパイプラインは、時代とともに変化してきた。元々はプログラマブルなCPU上で自由にソフトウエアレンダリングを行っていたものが、グラフィックスチップでの固定されたパイプラインに変わった。そして、今、再びプログラマブルなレンダリングへと戻りつつある。
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