デルは12.1型液晶のAtom搭載ノート「Inspiron Mini 12」(下図)を2008年10月27日に発表する。
Atom搭載ノートは、これまで10.2型以下のミニノートクラスでのみ展開されていたが、ついに12型クラスでもAtom搭載機が出始めることになる。12型クラスといえば、パナソニックの「Let's note」をはじめ、国内大手のモバイルノートの牙城。メーカー各社の技術の粋を集めて開発され、20万円以上する機種も多い。ここにAtom搭載の低価格機を擁して攻め入るのだから、場合によっては市場が根本から覆る可能性さえある。
CPUとバッテリー駆動時間こそ国内大手のモバイルノートより大幅に劣るとはいえ、Inspiron Mini 12は1280×800ドットと広い画面を持ち、キーボードも大きく打ちやすい。
重要なのが、実勢で9万円前後からという価格設定だ。モバイルノート1台分の予算で2台買えてしまう。使うソフトの種類を割り切り、ACアダプターを持ち歩くことをよしとすれば、ユーザーが雪崩を打ってInspiron Mini 12に動く可能性も否定できない。一方で5万円の壁を大きく超えた価格に飛び付くかどうか疑問の声もある。
もう一つ「Atomは10.2型超のノートに載せられない」という暗黙の了解が破られたことも注目すべき点だ。米インテルはかねて、Atomの用途について「10.2型以下のミニノートに使うことを強く推奨する」としていた(下図)。同社はその理由を「ユーザーがCeleron搭載のノートと混同して購入し、後で失望するのを避けるため」と説明している。だが実情は、単価がCeleronやCore 2 Duoより大幅に安いAtomにメーカーやユーザーが流れ、利益率の高いCeleronやCore 2 Duoの販売に悪影響が出るのを恐れているためというのが業界内の定説だ。
インテルからCPUを購入できなければパソコンを作れないメーカー各社にとって、「強く推奨」は事実上「義務」だ。しかし、ガリバー企業の一つであるデルがインテルと交渉し、その風穴が開いた。こうなれば、米ヒューレット・パッカードや台湾エイサーなどのシェア上位企業、低価格ミニノート最大手の台湾アスーステック・コンピューターなどが追随するのは、もはや時間の問題だろう。
■[補足] 日経パソコン2008年10月27日号に掲載した「スペシャルレポート」では「Inspiron Mini 12」の発表日を10月21日、価格を8万9980円からとしていましたが、同社の意向により発表日が10月27日、価格も変更となりました。また、発売予定日も10月29日となったため、その旨記載しました。 |
■変更履歴 [訂正]記事掲載当初、本体サイズの高さを「20.9~24mm」としていましたが、これ は突起部なしの寸法であり、突起部を含めたサイズは「23.3 ~27.6mm」となります。表は修正済みです。 [2008/10/31 13:40] |