PR

 11月17日、マイクロソフトがコンシューマー向けECサイト「Microsoft Store」(以下、Store)を開始した。Storeは同社初の直販オンラインサイト。WindowsやOfficeなどのパソコン用ソフトウエア、マウスやキーボードなどのパソコン用ハードウエア、家庭用ゲーム機器「Xbox 360」など、約250製品を取り扱う。

[画像のクリックで拡大表示]

 注目すべきは、ソフトのダウンロード販売。OfficeやWindows Vistaのアップグレード版などをダウンロードで購入できるのだ。同社のソフトはパッケージ販売が基本だっただけに、このインパクトは大きい。ユーザーにとっても、すぐにソフトを入手でき、メディアの管理が必要ないなどのメリットがある。

 ダウンロード販売は、他のソフトメーカーでは一般的な販売形態であり、「既に珍しいものではない」(マイクロソフト)。ただ、量販店での売れ行きを示す「BCNランキング」を見ても、「統合ソフト」の分野で常に上位を独占するマイクロソフトのOfficeがダウンロードで購入できるとなれば、パッケージ製品への影響は必至だ。ソフトメーカーによれば、「アップグレード版では、ダウンロード販売の数がパッケージ販売を超えているものもある。ダウンロード販売は年を追うごとに間違いなく増えている」。Storeの開始が、この流れを加速することは十分に考えられる。

“中途半端”の理由

 ところが、Storeの現状を見ると、疑問がわいてくる。一般にパソコン用ソフトでは、ダウンロード販売はパッケージ販売よりも安い。にもかかわらず、 Storeではその価格差はなし。マイクロソフトはその理由を「ダウンロード販売は、ドライブを持たないパソコンでもインストールできたり、ダウンロードを複数回出来るようにしたりと、パッケージにはない価値を提供できているから」としている。ただ、他のメーカーの直販サイトと比較すると、明らかに及び腰だ。

 この理由は、同社初の試みとなる「直販」という販売形態にある。従来、マイクロソフトの製品は、販売代理店や量販店、メーカーなどを通じてのみ購入が可能だった。それが、直接販売を開始することで、今まで製品を卸していた販売店などを「中抜き」することになる。既にソフト製品は「店頭で購入する、という一時期のイメージは消え、いまや売り場は縮小傾向に歯止めがかからない状態」(大手ソフトメーカー)。マイクロソフトが直販を手がけることはこの傾向に拍車をかけ、量販店のソフトの売り上げにとどめを刺すことにもなりかねないのだ。

 マイクロソフトとしては、今まで良好な関係を築いてきた量販店や代理店を刺激したくない。「あくまで、代理店や量販店などのパートナーとやっていくビジネスというのが基本。Storeの販売価格も、量販より安くして価格競争するようなことはない」と強調する。ユーザーメリットを考えれば、ダウンロード販売は始めざるを得ない。そのためには、直販サイトが必要。ただ、目立つことをやると量販店との良好な関係が崩れてしまう──。そんな本音が見え隠れする。ユーザーと量販店の板挟みになり、Store自体の意義やメリットが中途半端になってしまったわけだ。

 量販店や代理店の反応も冷ややか。「マイクロソフトのソフト製品は企業もコンシューマーも多くの人がプリインストールで入手しているのが現状」(大手販売代理店)のため、その影響は限定的と捉えている。量販店も「今のところ大きな影響はないと考えている」という。「逆に、マイクロソフト側も影響があるようにはやらないのでは」といった安心ともけん制とも取れる声も聞かれる。

 ユーザーの利便性が増す一方で、「あまりに突然のこと」と業界関係者を驚かせたStore。マイクロソフト自身が確固たる戦略なきまま船出したという印象はぬぐえない。