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 メモリーが安い。32ビットOSの事実上の限界である3GBを積んでも、バルクメモリーならわずか3000円ちょっと。なぜメモリーはこんなに安くなったのか。それは、DRAMメーカーの読み間違いとシェア争い、といった条件が重なったからだ。ユーザーにはうれしいメモリーの暴落だが、DRAMメーカーは、作るだけ赤字という状況に陥っている。その余波で、DDR2からDDR3への移行は吹っ飛んでしまった。

歴史上で最も安い2008年末のDRAMの値段

 「DRAMチップが、今はボールペン1本より安い。これならボールペンを売った方がよっぽど儲かる」

 あるDRAMメーカーのスタッフは、ギフト用の社名入りボールペンをくるくる回しながらこうこぼした。1GビットDRAMチップのスポット価格は、2008年12月についに60セント台に達した。2009年1月中旬現在は若干持ち直しているが、それでも1ドル前後だ。

 ボールペン並の価格は、DRAMにとっては危機的だ。なぜなら、DRAMの価格が1ドル台前半にまで下がると、ほとんどのメーカーは製造コストを割ってしまうからだ。DRAMメーカーによって異なるが、一般に減価償却も含めた採算分岐点は2ドル台以上と言われている。過去に暴落した時の最低価格が80セント台で、まさか、それ以下には下がらないだろうと言われていたのを、今回はついに割ってしまった。つまり、今は歴史上、一番メモリーが安い時なのだ。

 なぜ、ここまでのメモリー大暴落が起こったのか。それを知るには、まず、DRAMの価格とコストの構造を知る必要がある。

 DRAMのコストは、ほかの半導体製品と同様にダイサイズ(半導体本体の面積)に大きく左右される。ダイサイズが小さければ、1枚のウエハーから生産できるチップ数が増えて、製造コストが下がる。

 DRAMの場合、PCに使われる普及価格に入るためのダイサイズは100mm2以下。一般に50~80mm2程度が、普及価格とされている。大容量のDRAMは最初はダイが100mm2より大きく、サーバー用として少量しか生産されず、高価格で販売される。しかし、製造プロセス技術が進むにつれて、ダイが小さくなる。すると、DRAMメーカーは大量生産に入り、価格が一気に下がる。今は1GビットDRAMのダイが50~70mm2クラスで、低コストに生産できる。

 しかし、ダイをいくら小さくしても、テストやパッケージのコストがかかるため、ある程度以下にはコストが下がらなくなる。コストを下げる限界がある。そこで、一定のダイサイズに達すると、その容量のDRAMチップは、倍容量のDRAMチップに道を譲る。プロセス技術が進むにつれて、倍容量のDRAMチップのダイサイズが、普及帯の100mm2以下に入ってくるからだ。

 倍容量のDRAMチップの価格は、コストが低下するとともに下がり、ある時点で従来容量のDRAMチップ2個分の価格と同じになる。すると、倍容量のDRAMチップの方が容量当たりの価格が割安となり、市場が倍容量へと移行する。2007年には、この方程式通り、512MビットDRAMチップから1GビットDRAMへと移行が起きた。次は2010年に2GビットDRAMへの移行が起こる見込みだ。

DRAMの製造コストを最も左右するのはダイサイズ。プロセス技術が進むと、ダイが小さくなり、DRAMのダイコストが下がる。50~100mm2前後がPC向けの量産ダイサイズ。最終コストには、ダイコストのほかに、20~30セント/個のパッケージコストと20~35セント/個のテストコストが加わる。
DRAMの製造コストを最も左右するのはダイサイズ。プロセス技術が進むと、ダイが小さくなり、DRAMのダイコストが下がる。50~100mm2前後がPC向けの量産ダイサイズ。最終コストには、ダイコストのほかに、20~30セント/個のパッケージコストと20~35セント/個のテストコストが加わる。
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