インテルのネットブック向けCPUの上位版「Atom N280」を搭載したネットブックが続々と登場してきた。これまでに市販されたネットブックの大半はCPUがAtom N270で横並びだった。N280で性能はどう変わるのか。日経WinPC編集部では同CPUを搭載した「Eee PC 1000HE」(台湾アスーステック・コンピューター)でベンチマークテストを行い、N270搭載の従来機「Eee PC 1000H-X」と比較した。
両者の外観はほとんど変わらない(図1)。前者のAtom N280は動作周波数が1.66GHzでFSBが667MHz。後者のN270は同1.6GHz、533MHzだ。
図2は「Sandra 2009」のCPU関連テストの結果である。いずれのテスト項目でもおおむね従来機に比べ4%前後高いスコアとなった。1.66GHzと1.6GHzの差は3.75%。ほぼ周波数差通りと言える。
なお、テストではメーカー独自の省電力機能である「Super Hybrid Engine」の設定は「Super Performance Mode」とし、ウイルス対策ソフトは外した。
「PCMark05」でもCPUのスコアが4%強改善している(図3)。CPU以外ではHDDの伸びが比較的大きく、一方でグラフィックスは4%ほど低下。内蔵HDDは両機種とも米シーゲイト・テクノロジーの「Momentus 5400.5 160GB」だった。HDDそのものではなく、本体側のソフトウエアの改良によるものとみられる。
このほか、Sandra 2009のメモリー関連テストでは、転送するデータ量が少ない場合にデータ転送速度が改善していた。
一方、必ずしもすべてのケースで処理性能が向上するとは限らないようだ。円周率計算ソフト「スーパーπ」による円周率計算では、新機種の方が1%ほど遅い結果だった。前述の「Super Hybrid Engine」などがCPUの演算性能を制御し、結果に影響した可能性がある。このほか、CPU演算による3次元画像の描画性能を測る「CINEBENCH R10」でも、1~2%ながら新機種が低スコアとなった
アプリケーションの処理速度も測った。「iTunes 8.1」と「TMPGEnc 4.0 XPress」による動画変換、「SILKYPIX Developer Studio 3.0」による画像変換だ。iTunesでは新機種の方が若干速く、ほかの2つでは逆に若干遅くなった。アプリケーションの場合、CPU以外の部品の性能によっても結果が左右される。
実際、新機種ではCPU以外も改良されている。例えば起動時間。従来機は平均35秒弱だが、これを29秒強まで短縮。起動直後のロゴ表示も省略した。BIOSによる検査・初期化プロセスを簡略化して高速に起動するよう工夫したようだ。
バッテリー駆動時間も従来機の6.9時間から9.3時間へ延びた。バッテリー駆動時間測定ソフト「BBench」で満充電から5%へ減るまでの時間を測ったところ、従来機は4時間50分、新機種は7時間40分と性能向上を確認できた。ちなみに新機種のバッテリーパックは日本製だ。
結論としては新CPUにこだわらず、トータルな視点で製品を見るべきと言えるだろう。