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 昨年来、何かと話題の「デジタル教科書」。各所でさまざまな議論が起こっているが、多くの人がその実像をきちんと理解できていないのが実情だろう。本企画では、デジタル教科書に関する各界の識者へのインタビューを実施。その利点と課題をきちんと整理したうえで、デジタル教科書が子どもたち、ひいては日本の将来にどんな影響を与えうるのかを探る。

 第1回は、東京工業大学 清水康敬監事・名誉教授。教育の情報化に関する国内の第一人者で、総務省が2010年度に開始した「フューチャースクール」プロジェクトの研究会の座長でもある。

清水 康敬(しみず やすたか):東京工業大学卒業、工学博士。同大学に31年間勤務し、教育工学開発センター長、大学院社会理工学研究科長を務め、2001年3月に定年退職。国立教育政策研究所・教育研究情報センター長、独立行政法人メディア教育開発センター理事長。現在、東京工業大学監事(常勤) 、名誉教授。専門は電磁波工学、弾性表面波工学、教育工学。(撮影:稲垣 純也)
清水 康敬(しみず やすたか):東京工業大学卒業、工学博士。同大学に31年間勤務し、教育工学開発センター長、大学院社会理工学研究科長を務め、2001年3月に定年退職。国立教育政策研究所・教育研究情報センター長、独立行政法人メディア教育開発センター理事長。現在、東京工業大学監事(常勤) 、名誉教授。専門は電磁波工学、弾性表面波工学、教育工学。(撮影:稲垣 純也)

■デジタル教科書の有効性は何だとお考えですか。

 ズバリ言えば、子どもたちの学力が確実に向上することです。私はそう確信しています。

 電子教科書(清水氏は、「デジタル教科書」ではなく「電子教科書」という表現を用いる。理由は後述)には、音声や映像を始めとした多くの情報を盛り込める、学習や指導の履歴を残せるなど、さまざまな利点があります。中でも大きいのは、先生と子どもたちがディスカッションしながら、あるいは子どもたち同士が教え合いながら学ぶという学習を実現しやすいこと。いわゆる、協働教育です。これは間違いなく、学力の向上につながると思います。

 実例として、私が4年半前にシンガポールで見学した、「Classroom for the future」という教室の話を紹介しましょう。私はこのとき、電子教科書の有効性を実感しました。

 授業のテーマは火山でした。私たちが生徒役になり、教師役の先生が電子教科書を使って授業をしました。まず電子教科書の画面に触れると、活火山の説明が短時間のビデオで流れます。ビデオが終わった後に、先生は「学んだことをタブレットPCに書いてください」と言いました。生徒が、自分の画面に提示されている火山の絵に手書きすると、先生はそれらを並べて表示します。そして「この中で一番良くできているのはどれだろう」と問いかけます。そのうち1人の画面を大きく映し、議論が始まったのです。