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 スマートフォンやタブレット端末で視聴できるVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスが充実してきた。携帯電話大手3社は、5月に開催した発表会でVODの展開方針をそろってアピール。NTTドコモとソフトバンクモバイルは、この夏にビデオの配信数を数万本へと拡大する。KDDIも、パソコン、テレビを加えたマルチデバイス対応の新サービス「ビデオパス」を5月から立ち上げた(図1)。

 放送事業者も負けてはいない。民放キー局5社と電通は、テレビの一部機種などに既存の番組を配信する「もっとTV」で、6月からスマートフォンへの配信を開始。7月にはNHKの番組も加え、配信数は1万本に達する。ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコムやCS多チャンネル放送のスカパーJSATも、スマートフォン向けのVODに乗り出した。

 視聴できるビデオのジャンルには各社の得手、不得手があるが、多くのサービスは洋画、邦画、ドラマ、アニメなどを一通りそろえる。VODに詳しい野村総合研究所の三宅洋一郎・主任コンサルタントは、「携帯端末で動画を見る機会が多い若年層を取り込もうと、娯楽番組を充実させたサービスが多い」と見る。

●スマートフォンでさまざまなVODを楽しめるように
図1 海外の有力コンテンツを月額980円で見放題の「Hulu」の登場を契機に、通信事業者や放送局などが続々とスマートフォン向けVODサービスを始めた。ビデオの検索機能を備え、人気ランキングやお薦めなどの情報を提供するものが多い
図1 海外の有力コンテンツを月額980円で見放題の「Hulu」の登場を契機に、通信事業者や放送局などが続々とスマートフォン向けVODサービスを始めた。ビデオの検索機能を備え、人気ランキングやお薦めなどの情報を提供するものが多い
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Huluの登場が“黒船”に

 各社が相次ぎVODを強化する背景には、「Hulu(フールー)」の存在がある。米ハリウッドの魅力的な映画やドラマなどを配信するため、米国の大手メディア企業が共同出資で2007年に米国で始めたサービスだ。メディア業界の事情に詳しい慶応義塾大学の中村伊知哉教授は、「日本でも2011年9月にHuluがサービスを開始したことで、ますます群雄割拠の時代になった」と指摘する。

 Huluが始まるまでは、アップルが「iTunes」でiPhoneなどを対象に、人気作品を1本数百円で配信していた。これに対しHuluは、魅力的な海外作品を中心に数千本をそろえ、高画質でマルチデバイスを対象としたサービスとしながら、月額1480円で見放題という低料金を打ち出した。2012年4月には月額980円へと値下げ。これを“VOD業界の黒船”と見た通信、放送、コンテンツ配信の各事業者が、スマートフォンという新しい表示画面の普及を好機と捉えて、サービス強化にこぞって乗り出したのだ。