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User Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略で「ユーエックス」と読む。「ユーザー体験」と訳す。人間を中心とした設計思想を軸として、ユーザーがデバイスやサービスを快適に利用できるといった概念を指す。

 UX(ユーザー体験)とは、スマートフォンの登場以降、ITや家電業界などを中心に急速に普及している概念である。もともとは米国の認知科学者であり、米アップルや米ヒューレット・パッカードでインタフェースの研究に従事したドナルド・ノーマン博士が1990年代に提唱したもので、その骨格には人間を中心とした設計思想がある。

 広義ではサービス全般における顧客満足度と定義できるものの、歴史的にUXの概念はコンピューターやWebの世界で発展してきた。人間が機械やデバイスと接する際に入口となる部分をUI(ユーザーインタフェース)と呼ぶが、その入口をシンプルに分かりやすく設計=デザインすることで、利用者は混乱することなく満足感を得られる。例えば1980年代、机上の書類を動かすようなGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を採用した米アップルのMacintoshは、こうしたデザイン思想により人気を博した。

 Windows XPの「XP」がExperienceを由来とするのも有名な話だ。公式発表では「XPとはWindowsによる豊かで広がりのあるユーザー体験を象徴したもの」と明記されており、結果的にその使いやすさから、歴代のWindows OSの中で最も長期間利用されるOSとなった。

 UXを一般的に知らしめたのは、直感的なタッチパネル操作と明瞭なビジュアルを採用したiPhone(日本での発売は2008年)の登場だといえる。ここ数年は日本の家電メーカーもUXに力を入れている。例えばソニーはUX・マーケティングの戦略部門を抱えている。空間そのものを活用して新たな体験を創出する「Life Space UX」というコンセプトの下、電球形スピーカーや4K超短焦点プロジェクターを発売した。東芝もUXデザイン事例として、使いやすさにこだわった新幹線の自動改札機やエレベーターをSNSで公開。メーカーも単なるモノ作りでは終わらず、“その先にある体験”を提供する時代へとシフトしつつある。

2015年9月25日に発売された「iPhone 6s」。「3D Touch」という画面操作で新たなユーザー体験をもたらす
2015年9月25日に発売された「iPhone 6s」。「3D Touch」という画面操作で新たなユーザー体験をもたらす
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