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 都心に緑のネットワークをつくる──。2016年夏季五輪の国内候補都市となった東京のグランドデザインアドバイザーとして、安藤忠雄氏が示した将来イメージの一つです。デベロッパーや設計者、市民がそうしたビジョンを共有し、個々のプロジェクトに反映させていってほしい、といった趣旨の提案がありました。

 同様の意志を明確に持って臨んだ開発プロジェクトが、早くもひとつ実現しています。

 最新号(2006年12月25日号)に掲載した「住友不動産三田ツインビル西館」(close up建築)がそれ。設計は、日建設計が手がけています。

 担当した山梨知彦さん(設計部門副代表)に、現地を案内していただく機会を得たのですが、当初は、もっと敷地内で自足した“庭”を設ける案もあったとか。しかし、それでは生態系に連なる緑にはならないといったアドバイスを得たりする中で、航空写真を見て「東京には意外に緑が多い」と気づいた。ひとつずつでも、建築をつくる中でそれらがつながるよう配慮(配置)していけば、小動物などがどこまでも伝っていける緑の環ができる。

 といった観点から、高層の賃貸オフィス+住宅の足元にユニークなランドスケープが生まれました。

 これを具体例に、緑化については「仲間にも呼びかける」(山梨氏)とのこと。こうした場合、街路樹の話になることが多いのですが、ここでは異なる解答が選ばれています。柔軟な発想でプランニングの型をいくつか破ったこと、発注者との信頼関係の中で提案が認められたこと、それを外装デザインや構法に発展させていったこと。

 さて、どのような建築になったかは、本誌をご覧ください(周辺の緑との連携については、Googleマップの航空写真モードで見ていただくのがよさそうです)。

 別の記事では、住戸プランニングの選択度を徹底的に高め、従来と異なる販売手法に乗り出した分譲マンションの事例を取り上げています(トピックス「顧客重視の販売手法に妙策あり」)。三田の事例を含め、“顧客に選ばれる”ことに、よりシビアになったデベロッパーの姿勢もあって、都市部の空間供給の質が新たなフェーズに入っていることを感じさせる動きです。

 この秋に募集し、11月に公開形式による最終審査を行った「第4回 日経アーキテクチュアコンペ」の経過・結果報告も最新号に掲載しています。

 光井純さんに提示していただいた「子どもと大人が向き合う場所」というテーマには本誌も賛同し、即座にゴーサインとなったものです。読者の方以外にも門戸を開いたことで応募数倍増と手応えがあり、そのうえ真摯な提案の多いことに対し光井さんが非常に感心されていたことも印象的でした。受賞された皆さん、惜しくも逃した皆さん、今後いっそうの活躍をお祈りしています。

 あっという間の1年。その中に、かつてなく凝縮された格好で課題が荒いざらい明らかになった1年でした。来年も、地道にひとつずつ解きほぐしていきたいと考えています。では皆様、よいお年をお迎えください。