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 企業の技術力をより評価しようと,総合評価落札方式やプロポーザル方式などの採用件数が急増しています。ところが,技術力で競えるはずのこれらの入札が,書類作りに忙殺されてかえって技術力を磨く時間や場を奪っているようです。

 技術力を重視した入札制度を歓迎する声が聞かれる一方,例えば高度な技術提案までは求められない簡易型の総合評価落札方式でも,施工計画書や技術者の経歴,地域貢献度などに関する書類作りに疲弊している技術者は少なくありません。

 提案書の作成で技術力が磨かれるとはいえ,受注件数を増やすには多くの入札に参加せざるを得ず,なかには過去の書類を“切り張り”して使い回している企業もあります。

 工事成績評定も受注に影響することから,良い成績を取らなければならないというプレッシャーは大きく,結果,書類の作成に必要以上に力を入れる傾向が見られます。

 成績を付ける発注者にものを言えなくなってきたとの指摘もあります。以前にもまして契約外の仕事を断りづらくなり,例えば会計検査対策の書類作りを建設会社が担うケースは後を絶ちません。

 さらに,低入札への対策や紙と電子データの二重提出を求められる電子納品なども,本来のものづくりの魅力が実感できないと,技術者からやりがいを奪う一因になっています。

 現場ではコストダウンや品質管理,住民対応などの業務によってストレスが募り,「現場所長になりたくない」とまで考える技術者も増えてきたようです。

 仕事をどれだけ快適に進められるかが生産性や利益に影響するようになり,働きやすくモチベーションの向上につながる職場づくりが欠かせなくなってきました。

 例えば札幌市の中心部でアンダーパスの工事を手がけている岩田建設JVの現場事務所では,休憩室兼会議室に畳を敷くとともに,遮光カーテンを設けて都市土木に携わる職員のストレス解消に努めています。

 鳥取県の馬野建設は,女性社員が結婚や出産をしても働き続けられるように休暇や時短の制度を設けただけでなく,女性社員が担当する現場の施工管理などを上司や周囲がサポートして,女性も働きやすい環境づくりを実践しています。

 日経コンストラクションがかつて調査したところ,社員満足度の高い建設会社ほど社員1人当たりの営業利益が増える傾向にありました。働く人のモチベーションを維持し,いかに高めていくかは,技術力の向上以上に大きな課題になってきたと言えます。

 日経コンストラクション10月27日号の特集は「書類が蝕む技術力」と題し,技術競争に伴う書類作りなどで疲弊している技術者の実態を取り上げ,解決策を探りました。

 併せて同号の事例研究「仕事が進む快適事務所」では,働きやすい事務所づくりに努めている現場や企業の実例を描いています。

 市民や社会に必要とされることも,技術者のモチベーションに無視できない影響を与えるはずです。土木や公共事業の変化とともに,技術者はどう変革すべきかのヒントをお伝えする新連載「土木技術者改造講座」も同号から始めました。

 連載の第一回は,技術者が新しい視点を身に付けるための心得です。技術力だけでなくモチベーションを高めるためにも,日経コンストラクションを今後ともご愛読ください。