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 極端な低価格で落札した設計や工事で,ミスや手抜きにつながるケースが指摘されるにつれ,受注者に対する発注者の見方が“性善説”から“性悪説”に変わってきたようです。

 一方,日経コンストラクションが今年9月,受注者に対する満足度や好感度を発注者にアンケート調査したところ,「もう一度,仕事を頼みたいと感じた設計者や現場所長がいる」と発注者の 43%が答えました。

 同様の調査を試みた2002年にはその割合が31%だったことから,受注者に対する不信感が募る一方で,好感を抱くケースも増えてきたと言えそうです。昨今の工事成績評定の扱い方と同様,発注者の評価が二極化してきたのかもしれません。

 アンケート調査の自由意見欄からも,受注者に対する不満や期待が読み取れます。例えば不満として多かったのが,「設計者が現場を見ずに,机上で設計していること」。

 施工への配慮に欠ける設計が多いことから,「様々な条件が複雑に絡み合っているような設計の場合,われわれは建設コンサルタントには委託しない。建設会社の設計部門に委託している」と語る発注者さえいます。

 さらに,受注者側の技術者に求める能力も尋ねたところ,設計者の場合は「技術力や提案力」,施工者の場合は「品質管理能力」がそれぞれ最多を占めました。冒頭でも触れたように,低入札による施工の品質悪化が重要な課題になっているようです。

 日経コンストラクション11月10日号の特集は,独占禁止法の改正や技術提案型の入札の増加,そして極端な低価格での落札が頻発していることを受けて,建設産業でも避けられなくなってきた自由競争の時代に必要とされる技術者像を描きました。

 「自由競争時代の技術者像」と題し,先のアンケート調査の結果を基に技術者に対する評価の尺度を分析したほか,発注者の評価が高い技術者たちも実例で取り上げました。

 例えば,「再度,施工を頼みたい所長がいる」として複数の発注者が名前を挙げたのが奥村組。同社で九州新幹線の現場を手がける中嶋正次所長は,近隣への配慮を最優先に工事を進めており,その点が高く評価されています。

 工事看板の表現を従来の「徐行」から,だれもがわかりやすいように「制限時速5km」と改めたほか,品質管理の面では下請け会社に任せ切りにせず,コンクリート打設などの際は必ず元請けの技術者が立ち会うようにしています。

 「要は,当たり前のことを当たり前にやることだ」と中嶋所長は話し,「これからも“当たり前のこと”を,きちんとやっていきたい」と語っています。

 「損得勘定を抜きに,良い仕事をしようという真摯な姿勢が伝わってくる」と,群馬県のある職員が高く評価するのが,ライト工業の伊東信彦氏です。カラープリンターがなければ図面を色鉛筆で色分けするような小さな工夫の積み重ねが,評価されています。

 その伊東氏も「私は,まじめさだけが取りえのような人間。特別なことは何もしていない」と話しています。

 両氏に共通するのは,「常に相手のことを考えて行動する」点です。ちょっとした気遣いや心配りが,発注者の信頼を高めることにつながっているわけです。

 土木事業には極めて多くの人がかかわっています。当たり前のことが見えにくくなり,実践しづらくなってきた昨今ではありますが,他者との関係を重視し,コミュニケーションに配慮する能力が一層,大切になってきたことは間違いなさそうです。