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 予定価格を大きく割り込む「低入札」が,自治体の工事でも急増しています。例えば仙台市が2006年9月に入札を行った地下鉄東西線のシールド工事では,3件の工事で応札者の16JVすべての入札価格が調査基準価格を大幅に下回りました。

 仙台市だけではありません。日経コンストラクションが10月,都道府県と政令市を対象に調査したところ,滋賀県や北九州市,堺市,大阪市では2006年度の低入札工事の割合が50%以上。実に,発注した工事の半分以上を,低入札の工事が占めています。

 さらに,12の自治体では2003年度から2006年度にかけて,低入札の発生割合が2倍以上に増えています。そして,(社)横浜建設業協会が会員企業に対して実施した調査では,7割以上の工事で利益を捻出できていない実態が明らかになりました。

 「ノーガードの殴り合い」とも形容される昨今の入札事情を受けて,国や自治体が様々な対策を講じ始めましたが,抜本的な解決策は見いだせていないようです。

 先述のアンケート調査で低入札への対策も尋ねたところ,自治体の場合は「重点監督」が最も多く,「検査の回数増など体制の強化」,「契約保証金の引き上げ」が続きました。

 多くの自治体が「その落札価格で施工できるのか」とヒアリングする重点調査は実施するものの,それ以上の対策まではほとんど手が回っていないのが現状です。

 日経コンストラクション11月24日号の特集は「低入札現場の悲鳴」と題し,47都道府県と15政令市の低入札への対策を網羅したほか,落札後の対応に追われる発注者や受注者の実態を描きました。

 設計業務の低入札も,同号のニューズレターで取り上げています。国土交通省のデータによれば,予定価格の70%を下回る低入札では業務1件当たりの設計ミスが19.1件。低入札でない場合に比べて3割以上ミスが多いことがわかりました。

 工事も設計も,競争性を高めながら極端な安値による落札をどう防げばよいか――。発注者の試行錯誤が続くなか,受注者からは前向きな声も聞かれます。

 裏付けのない低入札とは一線を画し,安値ではなく「コストダウン」の一環と戦略的にとらえ始めた企業や技術者たちです。

 例えばトンネルの工事を予定価格の半分近い価格で落札したある大手建設会社は,工期短縮や資器材の転用などで利益を確保できると判断。低価格に「悲鳴」を上げるのではなく逆に,技術力をベースにコストダウンの知恵を出し合ういい機会とみています。

 低入札とは距離を置く企業,やみくもに価格競争に走る企業,そして戦略的なコストダウンで臨み,低価格での落札を重ねる企業の三つに分かれ始めたようです。

 公共事業の低入札は当分,収まりそうにありません。ダンピングとコストダウンとの違いは単に入札価格だけでは判別できませんが,コストを見極める眼力と技術力が,技術者や企業にとってますます欠かせなくなるはずです。