PR

 2006年3月,熊本県内のトンネル工事で50歳代半ばの職長が後退したバックホーの下敷きになって死亡しました。バックホーの作業範囲に合図をせずに入ったのが原因です。同僚が作業しているという油断から,重機に近付くことに抵抗がなかったようです。

 8月には東北新幹線の橋の工事現場で,クレーンで吊っていた鋼管杭が接合部から外れ,隣の杭を溶接していた52歳の作業員を直撃。作業員は頭部を挟まれて死亡しました。杭を吊っていたクレーンを振って,杭の傾きを調整しようとしたことが原因です。

 さらに,鳥取県の法面工事では,54歳のベテランオペレーターが吊り能力の3~5倍の鉄板をバックホーで吊ってバランスを崩し,斜面から転落して亡くなりました。

 経験が豊富で,作業内容や重機の扱いを熟知しているはずのベテランの死傷事故が相次いでいます。重機の作業範囲に不用意に入ったり,吊り能力以上の重さを吊るなど,安全にかかわる基本とも言えることを守らずに事故に至っています。

 ほとんどが「ヒューマンエラー」なのかもしれませんが,「作業員の不注意」だけで片付けていては,再発防止にはつながりません。

 日経コンストラクション12月22日号の特集「建設事故2006」では 2006年に建設産業で起こった重大事故を取り上げ,事故の実例とともにその背景を探りました。

 背景の一つとして浮かび上がってきたのが,「下請け会社の受注単価の下落」。現場の作業をマネジメントすべき職長が作業員の役割を兼ねる場合が少なくなく,安全への目配りが利かなくなってきたようです。

 もう一つは,元請け会社の問題です。現場に出る時間が短くなり,特に若い技術者は危機を感じ取る能力が乏しくなってきたと指摘されています。

 例えば,東京都大田区の水道工事の現場で2006年7月に発生した死亡事故。水道管を1点吊りしてバックホーで移動したことが事故を招きました。管が荷崩れを起こして回転し始め,車道にはみ出したところ車に接触。はずみで作業員に当たって死亡しました。

 2点吊りの基本を守らなかったことが問題ではありますが,元請けの現場代理人は30歳代で,それまで現場代理人の経験はありませんでした。「経験がなく,ベテラン作業員の指導が十分にできなかったのではないか」と発注者の職員はみています。

 では,経験が豊富なゆえに基本を軽視しがちなベテラン作業員の事故をどのようにして防げばいいか――。安全管理の専門家は,例えば「『面倒な手順を省略したい』といった人間の本能や特性を知り,そのうえで対策を講じるべきだ」と述べています。

 そして,(独)労働安全衛生総合研究所の調査によれば,事故が起こりにくい現場の条件として多かったのが,「雰囲気づくりを重視した現場」でした。

 「いい雰囲気づくり」は,働く人のモチベーションを高めるうえでも欠かせません。仕事の生産性を高め,若手の離職を防ぐことにもつながるでしょう。

 日経コンストラクションは土木の仕事に携わる人がやりがいを見いだし,建設産業に活力を生み出すための情報を2007年もお伝えしていきます。引き続き,ご愛読ください。