上場する建設会社の2006年3月期決算が出そろいました。土木の売上高が上位20社の決算を見ると,15社が前期の土木売上高を上回っています。公共工事の削減が進むなか,民間や海外の工事で売り上げを伸ばした会社が目立ちます。

 一方,利益率は伸び悩み,土木の完成工事総利益率は平均で10.3%。前期比で0.9ポイント下がりました。準大手や中堅規模の会社で営業減益となった会社が少なくありません。

 今後の業績予想は各社とも厳しく,上位20社のうちの15社で2006年3月期の土木受注高が前期より減少。来期の利益率の低下を予想する会社も約半数に上りました。

 例えば鹿島は2007年3月期の土木の利益率を9.3%と予想しており,「土木の利益率が10%を下回るのは記憶にない」と同社の渥美直紀副社長は話しています。

 利益率の低下は昨今の過当な価格競争が一因で,大型工事でも予定価格を大きく割り込む「低入札」が頻発しています。国土交通省の調査によれば,同省の8地方整備局が発注した2005年度の工事に占める低入札工事の割合は,前年度に比べて倍増しました。

 日経コンストラクション6月9日号の特集「いつまで続く低入札」では,最近の低入札の深層だけでなく,かつて安値受注として指摘された工事のその後も追跡しました。

 例えば,2001年に清水建設JVが予定価格の63.8%で受注した山梨県の琴川ダムの場合。監督強化のために約4億円の費用を県が新たに投じています。

 さらに特集では,発注者が講じる「ダンピング対策」などを通して,今後の建設産業に与える影響を探りました。相次ぐ低入札を,ある準大手建設会社の幹部は「大手による中堅つぶし」ととらえ,中堅建設会社の団体である(社)日本建設業経営協会の白石孝誼会長は「ここ1~2年が企業存続の分かれ目になる」と危機感を募らせています。

 2005年度の建設業許可会社数は54万2264社。2004年度に比べて2万社減りました。市場の縮小に反して増えてきた建設会社の数も,減少に拍車がかかるかもしれません。

 企業の存続だけでなく,土木技術者のありようにも影響を与えそうです。談合をやめたある建設コンサルタント会社の取締役は,「受注の見込みが立ちにくくなって入札時の価格が低下したほか,見積もりのための経費や作業量がかなり増えた」と話しています。

 談合とは「不確実なことを確実にする行為」とも言えます。それを談合ではなく競争によって確実にするためには,営業での提案力と価格が下がっても補える技術力が欠かせなくなります。

 「談合との決別」を機に激化する低入札への対応も同様です。ある準大手建設会社は(1)工事原価をしっかりつかむ,(2)そのうえでギリギリの金額で応札する,(3)入札機会をできるだけ増やす,といった戦略を描いています。

 コスト感覚は,土木技術者の大切な資質の一つとなりそうです。さらに,東京大学で建設マネジメントを研究する小沢一雅教授は「技術的な判断をして対価を得るのが技術者の仕事。この本質が問われることになる」と指摘しています。低入札は企業や技術者の淘汰を迫るとともに,土木技術者とは何かを問うものかもしれません。

 6月9日号では,「環境との新しい共生法」と題して自然環境の保全や再生の先進事例も取り上げました。直面する低入札の問題と,これからの市場として注目を集める「環境」。現状の課題を解決し,先を見通す目を養うために日経コンストラクションをお役立てください。