維持管理や補修の仕事が増えるにつれ,入札や契約の方式も変わりそうです。「構造物の劣化診断や補修設計は,施工を熟知していなければ難しい」と,点検や診断も建設会社に任せたいと考える発注者は珍しくありません。

 調査や設計を建設コンサルタントが担う従来の枠組みはすでに崩れ始めています。例えば北海道旭川市は,アセットマネジメントの業務を北海道電力に委託しています。

 業務の受託者はプロポーザル方式で決めたのですが,「北海道電力は維持管理の経験が豊富で,調査方法の提案も具体的。他の建設コンサルタントの提案とは,ひと味違う印象だった」と旭川市の担当者は話しています。

 さらに,(財)エンジニアリング振興協会が2006年3月に発表したアンケート調査の結果によると,「維持管理を複数年の契約で,民間企業に一括して任せるような方式が望ましい」と答えた自治体は15%。まだ多くはありませんが,先行して維持管理に取り組む自治体ほど,新たな契約方式に関心を示す傾向が見られました。

 すでに青森県は県内を7地区に分け,各地区内にあるすべての橋の維持管理を2006年7月から地元の建設会社1社に任せ始めました。地元の建設会社を対象にした簡易公募型プロポーザル方式を実施。点検から調査,簡易な補修まで建設会社が担っています。

 日本ではあまり例がないこうした契約方式を採用したことについて,青森県の職員は次のように説明しています。「点検で見つけた不具合を取りまとめてから発注するとタイムラグが生じる。見つけたその場で補修できれば,橋の長寿命化を図ることにつながるし,安全性も速やかに確保できる」。

 維持管理を担う人材も,現役の技術者とは限りません。滋賀県湖東地域振興局は,県や県内の自治体で道路の維持管理業務に携わった経験のあるOBに,舗装の点検や補修などを委嘱しています。

 自治体の財政難や人材不足が,このような新しい契約方式を生み出しているようです。さらに今後は,技術的にも難しい条件の仕事が増えるでしょう。例えば,図面や計算書が残っていない構造物を診断して補修する――。

 日経コンストラクション8月25日号の特集「次代のニーズに応える補修技術」では,上記のような財政難や人材不足などへの対処法だけでなく,アセットマネジメントに対する主要発注機関の取り組みについても独自に調査してまとめました。

 例えば,アセットマネジメントに取り組んでいる都道府県は2004年の調査で全体の2~3割。それが,2006年には6割に急増しています。

 点検や診断の業務も受注しようと,建設会社は既設構造物の監視や計測のシステムを続々と開発しています。そして多くの建設会社が,自社の専門家のアドバイスを特徴の一つとして挙げ,他社との差別化を図っています。

 維持管理の需要増とともに新しい契約方式を試みる自治体は増えてきましたが,結局は技術者個人の力量や経験がますます重視されることは間違いなさそうです。