「自治体などの発注機関の職員に資格は必要ないのか」――。日経コンストラクションの読者意見欄には,いまもこのような指摘が多く寄せられます。それと似た指摘を最近,下請けとして詳細設計を手がけるある建設コンサルタントの技術者から聞きました。

 いわく,「われわれ下請け会社の担当者には技術士の有資格者が多い。一方,打ち合わせに出てくる元請け会社の担当者は総じてレベルが低く,資格も持っていない。その結果,技術的な問題を指摘しても議論がなかなかかみ合わない」。

 資格を持っているから技術力があるとは,言い切れません。取得後の研さんや取得に向けた勉強が技術力の向上につながるわけで,役所も企業も同じです。例えば職員の技術力を高めるために,徳島県は一級土木施工管理技士の取得を目指す研修を始めました。

 研修を受講した職員の中で初の合格者となったのは,県の建設管理課で技術主任を務める丸岡昭彦さん(34歳)。丸岡さんは「資格取得の勉強を通して,施工現場ではどんなときにどんな問題が起こりやすいのか,危険予測ができるようになった」と話しています。

 実務経験が豊富な人が資格を取得することで,顧客の信頼が高まる場合もあるようです。4度目の挑戦でコンクリート診断士の資格を取得した梶山和徳さん(55歳)もその一人です。北海道・道東セメント販売で構造物の補修を長年,手がけてきました。

 資格を取得したところ,面識のなかった顧客からの依頼が増えて補修や調査の売上高が全体の4割を占めるまでになりました。「診断士の資格を取得してからは,第三者の中立な立場で調査してもらえると,発注者などから信頼されるようになった」(梶山さん)。

 日経コンストラクション7月14日号の特集は「資格を駆使する技術者たち」と題し,資格をフルに活用している「達人」たちを取り上げました。営業や起業の際だけでなく,市民に技術者の存在をアピールするために資格を活用している人もいます。

 併せて特集では,仕事や転職に役立つ資格のほか,CPD(継続教育)の動向や生かし方も通して,資格を取得することのメリットと活用法を改めて探ってみました。

 技術力の向上が求められる一方で,手抜きや改ざんをどう防ぐかも急がれています。例えば,施工ミスを隠すために無断で工事写真を改ざんした建設会社に対して2006年6月,国土交通省北陸地方整備局は2カ月間の指名停止を科しました。

 鋼管杭を打ち込むために試掘したときに,地中の汚水管を破損。それを,発注者への報告では「汚水管は確認できなかった」と,汚水管を消した写真を提出したものです。

 トラブルへの対応方法も問われています。耐震補強工事に伴うアンカーボルトの打設時に,橋脚の主鉄筋を無断で切断したとされる首都高速道路では,発覚から半年たっても抜本的な対応策は見つかっていません。

 同号ではJR山手線などの隆起や沈下のケースも交え,都市部を中心にトラブルが続出する理由や背景について考えてみました。トラブルが相次ぐことに,多くの専門家が「最近の技術者は問題を予見する“想像力”が働かなくなってきた」と指摘しています。

 
 7月14日号には資格やトラブルの話題以外にも,技術者にとって大切な“想像力”を養っていただくための記事を豊富に掲載しています。ぜひご覧ください。