日経コンストラクションではかつて,顧客満足度をテーマにした特集記事の中で両極端な技術者像を挙げ,発注者の満足度をアンケート調査したことがあります。

 その中で最も満足度が低かったのが,「質は高いが仕事が遅い技術者」。逆に約8割の発注者が,「質は普通だが仕事が早い技術者」の方が満足度は高いと答えています。

 さらに,住民の人が好感を抱くのも「尋ねたことにその場で答えてくれる技術者」で,「上司に相談してから後で返答します」と答える技術者には不満を抱く傾向がみられました。

 仕事にスピードが求められるのは,建設会社や建設コンサルタントなどの企業だけではありません。発注者である役所も同じです。

 例えば(社)全国土木施工管理技士会連合会が2004年にまとめたアンケート調査の結果によると,発注者に対する不満の中でも「指示が遅い,なかなか承認がもらえない」といった,発注者の対応の遅さにいらだつ声が少なくないようです。

 京都府土木建築部下水道課の市田雅巳さんは,「発注者の判断の遅れが受注者のもうけを阻害する大きな要因」と指摘。「ワンデーレスポンス」と呼ぶ取り組みを実践しています。

 建設会社などの問い合わせに24時間以内に返事をするというシンプルな取り組みですが,このルールを徹底することで,「発注者は間違いなく変わる」(市田さん)。

 スピード感が緊張感を生み,意識改革につながるからです。問い合わせに回答するためには発注者に技術力が必要で,結果的に技術の伝承にもつながると市田さんはみています。

 京都府では今夏から,原則としてすべての土木工事でこの考え方を実践し始めました。国土交通省北海道開発局も, 2006年度からモデル工事という位置付けで始めています。

 日経コンストラクション8月11日号の特集「発注者は変われるか」では,ほかにも自ら「変わろう」と行動し始めた個々の職員に焦点を当て,発注者として果たすべきこれからの責任や役割とは何かを探りました。

 発注者が自らの責任や役割を明確にすることで,受注者である民間企業にも大きな影響を与えるはずです。発注者と受注者との信頼関係を再構築するきっかけにもなるでしょう。

 同号では恒例の工事成績・コンサルタント業務成績のランキングも掲載しています。ここでも,業務成績で85点という高得点を獲得した建設コンサルタントは,「発注者との信頼関係を築くことに尽きる」と,高評価を得る秘訣を話しています。

上記のワンデーレスポンスによって役所の意識が変われば,「建設会社も利益が出るし,住民もメリットを享受できるだろう」(市田さん)。建設産業や公共事業が信頼を得るために必要なのは,まずはスピード感なのかもしれません。