独占禁止法の改正案と公共工事の品質確保の促進に関する法律案が臨時国会に提出されたのは2004年秋。それを受けて日経コンストラクションは2004年12月10日号で,これらの法案が建設産業にどのような影響を与えるのかを,四つのシナリオを基に描きました。

 そのうちの一つが,改正独占禁止法によって談合は成立しにくくなるが,品質確保法の運用が十分に行われない場合。価格による競争性だけが高まり,過当競争によって極端な安値受注が頻発するだろうと考えました。このシナリオが,現実になりつつあります。

 例えば2006年1月の改正独占禁止法の施行や相次ぐ談合事件を機に,大手建設会社はコンプライアンス(法令順守)の徹底に取り組み始めました。鹿島や大成建設,大林組,清水建設は「談合との決別」を打ち出し,営業担当者の配置転換などを実施しています。

 これまでの「法令順守」とはどこが違うのか――。日経コンストラクション4月14日号の特集「『今度こそ本気』の法令順守」では,情報公開にも力を入れ始めた建設会社や建設コンサルタントに焦点を当て,併せて今後の受注競争に与える影響を探りました。

 特集の中のインタビューで,(社)日本土木工業協会の葉山莞児会長(大成建設社長)は,「まずは大手がしっかりした姿勢を示す」と語り,その結果,「地方の会社が反発してJVが組めなくても仕方がない」と話しています。

 さらに大成建設の社長として,同社の営業活動にも言及。問題視されている建設コンサルタントへのいわゆる「手伝い設計」に対して,「全部やめろと言っている」と,コンプライアンスの徹底に取り組む姿勢を打ち出しています。

 そして鹿島は4月6日,新潟市発注の工事をめぐる談合事件の排除勧告を受け入れる同意審決を公正取引委員会に申し出ました。「過去の問題点は早期に清算し,改正独占禁止法の順守に努めるべきである」(同社広報室)と説明しています。

 談合の根絶は容易ではありませんが,建設会社や業界団体の考えや姿勢は変わってきたようです。その影響なのか,大規模な工事や「技術力を重視した」はずの総合評価落札方式で,極端な安値受注が頻発しています。

 4月14日号の「プロジェクトだより」でも,トップのニュースは低入札です。国交省関東地方整備局が発注した神奈川・国道1号原宿交差点立体工事の入札で,33億4331万円(税抜き)の予定価格に対し,落札者の大成建設の契約金額は19億4000万円。低入札価格調査を経て,契約に至っています。2位の大林組JVとの差は約10億円にもなります。

 頻発する安値受注を受けて,発注者も対策を講じ始めました。一例を,同号のIT短信に掲載しました。ウェブカメラで撮影した映像の公開です。低入札価格調査の対象となった工事を国交省は2006年度,「建設現場のオープン化」事業に加える方針です。

 極端な低入札が頻発するのは,技術力が十分に評価されていないからだという指摘は少なくありません。そこで続く4月28日号の「工法特集2006」では,各社が提案した新技術や独自工法が評価されて随意契約などに至った実例を取り上げます。

 価格競争が激化するなか,価格の面ばかりに目を奪われがちですが,本当の技術競争の到来は間近です。4月14日号とともにお読みいただき,建設産業に表れた変化をぜひ,読み取ってください。