日経コンストラクション3月24日号はミスの実例と技術の両面から検査のあり方を考える  

「官から民へ」。土木の分野でも,従来は官が手がけていた検査などを民間企業に任せるようになってきました。官と民がそれぞれ果たすべき役割や責任が変わりつつありますが,それを十分に認識しないまま事業を進めた結果,設計や施工のミスを見逃してしまう――。

 このようなケースが目立つことから,日経コンストラクション3月24日号の特集は「検査の失敗」と題し,2004年度の会計検査報告の結果とともに,民間委託などが招いた事故やミスの実例を取り上げました。

 例えば,国土交通省が2004年度から始めた「ISO9001認証取得を活用した工事」と呼ぶ制度があります。同工事では,発注者が行う段階確認の一部を施工者が自ら行う自主検査に代えることができます。施工者の自主性に任される部分が増えるわけです。

 この制度をうまく活用できなかったことが一端となり,福岡県久留米市で架設中のPC(プレストレスト・コンクリート)中空床版橋が崩落。コンクリート打設などの作業中だった作業員10人が約6.4m落下し,軽傷を負いました。

 事故の直接の原因は,支保工が施工承諾図通りに造られていなかったこと。支保工は「指定仮設」で発注者が仕様を決めていましたが,施工承諾図に記された筋交い(すじかい)などが実際にはほとんど設けられていませんでした。

 さらに原因を探っていくと,「現場の担当者がISO活用工事に不慣れで,自主検査のタイミングがあいまいなまま,工事を進めてしまったようだ」と施工を担当した建設会社の部長は話しています。

 通常の工事なら,支保工の設置が完了した後,発注者が段階確認を実施し,コンクリートを打設するのが一般的です。一方,ISO活用工事の場合は「適切な時期に発注者が施工者の検査書類を確認すればよい」となっています。結果的に,支保工のチェックがきちんとされないまま,コンクリートの打設が始まったのです。

 ほかにも,施工監理を民間に委託した横浜市営地下鉄の工事で,上下線の線路を仕切る間仕切り版が落下して,地下鉄の車両と接触する事故がありました。

 施工者から設計変更の提案を受けて,間仕切り版の留め具を簡易な「打ち込み鋲(びょう)」に変えたことが原因です。事故後の実験で,風圧が繰り返し作用する条件では打ち込み鋲の破断や抜け出しが確認され,打ち込み鋲の採用は不適当だったと結論付けています。

 発注者の横浜市が留め方の変更を知ったのは,事故が起きた後。工事では設計を担当した設計事務所が「委託監督員」として,横浜市とともに施工監理を担う体制になっていました。

 設計の内容を変える際は委託監督員と発注者の監督員とが協議するよう定められていましたが,この手順が守られていませんでした。設計事務所の委託監督員は,施工者が独自に発注者に対して変更を伝えていると思い込んでいたようです。

 それぞれの責任や役割にあいまいさを残しつつ,これからは熟練の技術者や技能者が不足してきます。さらに,既設構造物の点検業務の増加を受けて,手軽に扱える診断や検査の技術が増えてきました。

 同号の動向解説「手軽さ志向の維持・補修技術」では精度が高く,安価で簡単に扱える技術を中心に取り上げています。例えば非破壊検査の結果を三次元でわかりやすく表示する「マルチパスアレイレーダ」と呼ぶ装置。建築の耐震偽装事件以来,問い合わせが急増しているようです。

 非破壊検査の利用は維持・補修に限りません。新設工事でも採用が増えそうです。国土交通省は2005年度に,新設の橋梁工事で非破壊検査による品質管理を試行。鉄筋のかぶり厚さと配筋状態の確認を始めました。

 「民間にできるものは民間に」という考えが土木や公共事業でも広がるなか,だれが責任を持って設計や施工の品質を検査し,どうチェックするのか――。日経コンストラクション3月24日号の特集に加えて動向解説もぜひお読みいただき,皆様もお考えください。