日経コンストラクション3月10日号は土木の「格差」に焦点

 維持管理の需要が高まるにつれ,補修の講座を設ける大学が目につくようになってきました。先日も,ある私立大学でコンクリート構造物の補修の講座を受け持つ教授と話す機会があり,以下は話題が昨今の学生の質に及んだときの様子です。

 教授「単に質が低下してきたというより,二極化してきましたね」
 西村「二極化とはどういうことですか?」
  教授「非常に優秀な学生がいる一方で,例えば『水セメント比』といったコンクリートの基本的な用語さえ知らない学生が補修の講座を受けにきます」
  西村「コンクリートの単位を修得した学生が対象ではないのですか?」
  教授「うちの大学では,コンクリートが必修ではないもので・・・・」

 「最近の学生は土木の基本的な用語も知らない」と指摘されるのは,いまでは珍しいことではなさそうです。「コンクリートが何でできているのか知らない」,「施工の基本も知らずに建設会社の面接にやってくる」など,学生の質を問う声が特に建設会社から聞かれます。

 大学などでは,「企業が評価する学生」の輩出に向けて実習や演習に工夫を凝らし始めましたが,質の課題と並んで深刻なのは,土木系学科の人気が低迷していることです。

 例えば,土木系学科の入試倍率の全国平均は1990年の4.2倍から2005年は2.1倍にまで下がり,倍率が1.5倍を下回る大学も全体の2割を占めています。工学部の中で比べても土木系学科の倍率は低く,「格差」が生じつつあるようです。

 このような実態を踏まえ,日経コンストラクション3月10日号の動向分析「土木離れの防ぎ方」では,土木の人気回復を図る各校の広報戦略を解説。それらの取り組みから,建設産業が土木の魅力を社会に伝える際のヒントを探りました。

 「土木工学科」が不人気なのは,「土木」に対する理解の低さにあるようです。「高校の進路指導の先生さえ,土木がどのような分野を扱う学問なのか知らない」(ある大手予備校の職員)といった声が聞かれます。橋は建築家が設計して,土木技術者は施工するだけと考えている人は,いまも少なくありません。

 不人気のもう一つの理由は,「土木」に対する悪いイメージです。「土木という言葉からは,談合などで競争しない古い体質を連想する」と,ある大学の学生は話しています。

 官と民との対等ではない関係や様々な格差も,公共事業を主とする土木の「体質」と言えるかもしれません。その格差や関係を見直そうと,「理不尽な発注者」へ反論し始めた受注者の実例を同号の特集「発注者はうらやましいか」で取り上げました。

 例えば,道路改築工事に伴って法面が崩壊した事故では当初,事故の責任は「施工者にある」とされたことに施工者が反論。最終的に県が自らのミスを認める結果となりました。橋にひび割れが生じたことから造り直しを命じる発注者に対して施工者が認めず,協議が続いているケースもあります。

 仕事量の減少に伴って,「発注者に逆らうと大変」といった風潮は根強いですが,「ミスや事故の責任を安易に認めて対外的な信用を失いたくない」と考える企業が増えてきたようです。

 次号の3月24日号では,官民のあいまいな役割分担が招いた事故やミスを取り上げます。建築物の構造計算書の偽装事件を受けて検査の体制が問われるなか,ミスの実例を通して役割分担や検査のあり方を考えます。引き続き,日経コンストラクションをご愛読ください。