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日経コンストラクション1月27日号は「荒廃」の危機を乗り越える方策を特集

長野県南部に下條村という人口約4200人の村があります。特別な財源を持たないこの村の人口が年々,増えています。合計特殊出生率は1.97人と国の平均値を45%も上回り,0~14歳の若者の人口比率は2005年10月1日時点で17.6%。県内の自治体で最も高い比率です。

若者の定住や少子高齢化の克服に成功したのは,道路や水路などのインフラを受益者である住民が無償で施工するようになったからです。村民が無償で労務を提供することで生じた財政の余裕を,村では若者の定住策や少子化対策に振り向けてきました。

住民から工事の要望があれば,自治会長などが意見をまとめて村に申請。受益戸数が3戸以上であれば,村がコンクリートなどの資材を供給して村民が自らの手で施工します。当初は村民の反発もありましたが,いまでは毎年約100件の工事を村民が施工しています。

公共事業であっても村民に負担を求めることについて,同村の伊藤喜平村長は次のように説明しています。「負担する実感がないことが,不要なインフラの要望に結び付く。自分で汗をかけば,必要最小限の内容で満足できる」。

日経コンストラクション1月27日号の特集「『つくらない』時代の社会資本整備」では,1月13日号で描いた「荒廃」の危機を回避する方法として七つのキーワードに着目。先行する各地の実例をキーワードごとに取り上げ,「つくらない」時代への備え方を描きました。

一つは,先の下條村のように「住民が自ら施工する」。ほかに,「民間の資金を利用」,「独自の基準を設ける」,「ソフトで対処する」,「造り直さずLCC(ライフサイクルコスト)を低減」,「既存の施設を活用」,「景観を生かす」の六つ。

これらに共通するのは,「担い手やつくり方」を変えるという発想です。中でも無視できないのが住民参加の浸透。道路や河川の維持管理を地域住民などに委ねるアダプト制度をはじめ,住民が社会資本整備の重要な担い手になってきました。

公共事業に住民参加が浸透するのに伴って,土木と建築とを明白に分けた“縦割り”の体制では,住民のニーズに十分に応えられない状況にもなっています。技術力重視の傾向が強まってきたこともあり,土木と建築の部門が協働するケースが増えています。

住民ニーズの反映や技術力の強化に向けて土木と建築の関係が変わり始めたことから,同号では「近づく土木と建築の距離」と題した動向解説も掲載しています。

その中で,ワークヴィジョンズ代表の西村浩氏は「住民にとっては土木も建築も関係ない」と語り,円組代表の皆川和輝氏も「社会資本として後世に残していくには,土木と建築を区別することは無意味」と指摘しています。両氏はともに土木工学科の卒業。皆川氏は土木で学んだ土質や構造の知識が建築設計を手がける際の大きな武器になっています。

マンションなどの構造計算書の偽造事件では,構造計算の審査や検査の不備が明らかになりました。土木で培った技術力を生かし,建築設計の分野で多くの土木技術者が活躍する日がくるかもしれません。