日経コンストラクション2月10日号は改ざんの実態と耐震補強の今後を詳報

マンションなどの耐震強度偽装問題が明らかになった建築だけでなく,土木でも品質への危機感が高まっています。日経コンストラクションの最近の読者意見欄を見ると,例えば建設会社で施工管理に携わる50歳の男性は「人間が行っている以上,職業倫理に反する行為は必ず繰り返される」と述べ,それを前提に次のように提案しています。

  「第三者による抜き打ち検査も行うべきだ。今回の偽装事件では,第三者機関が不正を見抜けなかったが,それを防ぐためにも,検査結果を発注者だけでなく一般の国民に開示する必要があるだろう。施工者が自主的に管理コストをかけるのには限界がある。品質確保に伴う管理や検査を法的に義務付けることを望む」。

 さらに,専門工事会社に勤務する31歳の技術者は,一次下請けとして橋の耐震補強に携わった現場を例に上げ,「元請け会社も下請け会社も技術力が低下しているようで,社員のプロ意識の欠如を感じることが多くなった」と指摘しています。

  元請け会社の社員に対して「技術的な話ができない」と技術力の低下を嘆き,さらに二次下請け会社についても労務単価の低下などによって,「技術力が低く,責任感のない職人しかいない会社を二次下請け会社として契約せざるを得ない」と記しています。

 そして,建設会社を経営する62歳の男性は,各地で進む入札制度の改革が「弱肉強食」をあおっていると考え,以下のように危機感を募らせています。「低価格で落札しても,いまは過去の内部留保を切り崩してなんとか工事を完成させている。しかし,その蓄えも尽きたら,土木でも耐震強度偽装問題のようなことが起きるのではないだろうか」。

 建築物の耐震強度偽装のように全国規模の社会問題にまでは至っていませんが,土木でも改ざんが相次いでいます。それらの実態を「土木でも改ざん続出」と題し,日経コンストラクション2月10日号の特集で描きました。

 写真の改ざんやコンクリート製品の製造日の偽装,納税証明書や契約図面の偽造などが後を絶たず,それらの実態からは,「工事成績の点数を上げたい」,「入札参加の資格を得たい」,「建設会社から納入を急がされた」,「住民との交渉を早く終えたい」といった土木の実務者が直面している課題の一端が浮かび上がってきます。

 では,偽造や偽装を防ぐにはどうすべきか。改ざんが発覚した組織で目につく再発防止策は,「複数の部署や職員でチェックし,情報を共有しておくこと」。先述の「検査結果を一般に開示する必要がある」との指摘は,一理あるかもしれません。

  同号では,「ピークを迎える難条件の耐震補強」と題した記事も併せて掲載しています。耐震補強のこれからの市場を設計や施工の実例を交えて取り上げました。これまでほとんど対策が進まなかった鉄道盛り土や宅地造成地が新たな市場となり始めたほか,施工しづらい場所での工事がここ2~3年でピークを迎えそうです。

  「施工しづらい」と言えば,橋の耐震補強工事でアンカーボルトを無断で切断した事件を思い出します。2002年から2003年にかけて,国土交通省中部地方整備局や旧日本道路公団,岐阜県や愛知県などで手抜きによる施工不良が続々と発覚しました。

 日経コンストラクションでは,これらの事件を2003年5月9日号の特集「手抜きの構図」で報じましたが,その原因を探ってみると「リストラで人手が足りない」,「元請け会社の下請け管理能力が低下している」,「発注者が無理難題を受注者に押し付ける」など,建設産業がいまも抱える根深い問題に突き当たります。

 先の改ざんの特集でも土木の様々な課題が改めて明らかになりましたが,改ざんや手抜き,隠ぺいは一朝一夕で解決できる問題ではなさそうです。

 労働災害の分野でよく聞く法則に,「ハインリッヒの法則」と呼ばれるものがあります。1件の重大事故の背景には29件の軽傷の事故があり,さらにその裏には300件のヒヤッとした体験があるという「警告」です。この300件でさえ,「氷山の一角にすぎない」といった指摘もあります。

 2月10日号で取り上げた改ざんの実例は「1件の重大事故」なのか,「300件のヒヤッとした体験」の一つなのか――。建設産業や公共事業が以前から抱える様々な問題とも照らし合わせつつ,まずは同号をお読みいただき,皆様もお考えください。