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 屋上緑化で使用する植物として,ここ2~3年,セダム類が急速に普及し始めた。「セダム(Sedum)」は小型の多肉植物の総称。総じて乾燥に強く,数cmという薄い土壌でも育つ。日本では「マンネングサ」と言った方がなじみがあるかもしれない。

 屋上緑化の先進国ドイツでは,20年ほど前からセダム類を使った薄層緑化の技術開発が進んだ。10月25日に開催された本誌主催の屋上緑化セミナーでは,ドイツ・ハノーバー大学のH・J・リーゼッケ教授が,「ドイツではセダム類を使った粗放型屋上緑化が全体の9割を占める」と報告し,受講者を驚かせた。

 そのセダム緑化の技術が90年代後半になって日本にも輸入され,「メンテナンスの手間の少なさ」が受けて,市場が拡大しつつある。しかし,夏場に乾燥するドイツと,夏に湿気が多く,台風も多い日本とでは生育条件が大きく異なる。性質をよく知らずに施工して,失敗を招いている例も多い。

 セダム類は乾燥に強いが湿気には弱い。イメージとしてはサボテンのようなものだと想像してほしい。普通の植物と違って,水分を過剰に与えると枯れてしまう。リーゼッケ教授も,「ドイツでは,セダムが定着した後は水をまかない」と言っている。しかし,日本人はどうしても水をまきたがるようだ。過剰な散水設備を付けて,結果的に枯らしてしまう例も少なくない。

 ドイツ人は,屋上緑化を「開発によって失われた自然の回復」ととらえているとよく言われる。だから,野草が勝手に生えてこようが放っておく。それに対し,日本人はどうしても“盆栽”の発想から離れられない。管理は不要だと言われても,こまめに手を入れて,自分のイメージする姿に植物を強制したくなる。

 セダム緑化が日本に定着するかどうかは,日本の気候に適した緑化基盤の開発など,技術面に負う部分ももちろんあるが,それに以上に「盆栽から脱することができるか」という精神的な部分に負うウエートが大きい気がする。

 セダム緑化の注意点については,日経アーキテクチュア11月25日号74ページを,屋上緑化セミナーの講演内容については以下のサイトをご欄いただきたい。

(宮沢洋/日経アーキテクチュア編集)