日常の様々な物を形づくる材料には、なぜか郷愁を誘うものと、そうでないものがある。郷愁を誘うのは、自分の体験と結びついているからという場合もあるが、かつてそのものが、人の暮らしになくてはならない時間を持ったことがあるからではないかと思う。

 「郷愁」とは、過去を懐かしむ気持ちのことだ。だからといって、ここに登場する「マテリアル」は、必ずしも過去の遺産ではない。懐かしい材料とそれを支える技術の現場は、いまどんな困難や希望を携えているのか。

 そして懐かしいという気持ちの持つエネルギーは、未来へと、どのように繋がって行くのか。それらのマテリアルがつくられた背景、今も使い続ける人々。残されたものの匂いを知ることは、新しい建物づくりのヒントを得ることにつながる。建築関連のウェブサイトだからこそ、生活全般に幅を広げ、そんなマテリアルを取り上げていきたい。

 第1回、第2回はいきなり活版印刷。今後もこんな調子なので、よろしくお付き合いください。