
武藤聖一の欧州「最新建築」撮り歩記
目次
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【第73回】デンマークを太古から展示・解説した地質学博物館へ──メン島・デンマーク
日本人が夏休みを取るようになったのは明治の初め、欧米の習慣に倣ってからだ。暑い最中、米つくり農家は田の草取りで忙しく、長く休むという発想には至らなかったようだ。そのDNAを受け継いでいるせいか、今日でも割り切って長休みをとる日本人は少ない──と、先日の「産経抄」に出ていたが、なるほどねと思った。
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【第72回】運河に面したガラス張りの劇場へ――デンマーク・コペンハーゲン
港町コペンハーゲンで最もデンマークらしさを残すニューハフンの近くの運河沿いに、オペラハウスに続く王立劇場の第2弾、Skuespilhusが今年2月16日にオープンした。こけら落としに上演されたのは、モデル城がデンマークにある演目「ハムレット」だ。
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【第71回】循環性を重視したブーメラン形プランのカレッジへ─コペンハーゲン・デンマーク
スペイン・サラゴサでの万博速報で中断してしまったが、再びデンマークに戻ることにする。連載65回と66回ではニュータウン開発が進むオアスタッドにできた新しい学生寮を紹介したが、今回はベルリンのデンマーク大使館の設計で注目され、コペンハーゲンをベースに活躍する3xN Architectsの最新作、オア…
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【第70回】雫をイメージした水の塔――スペイン・サラゴサ万博(4)
いまサラゴサ万博の会場内で最も高い建築物が「水の塔」である。3層からなる白いコンクリートのビルの上に構築されている。高さ76mのメタルフレーム、ガラス、コンクリートからなる透明感に満ちたデザインで、バルセロナを拠点に活動する設計者のエンリケ・デ・テレサと、フレーム構造の第一人者といわれるジュリオ・…
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【第69回】エコ志向のスペイン館、世界最大規模の淡水水族館ほか──スペイン・サラゴサ万博(3)
サラゴサ万博が開幕して既に1カ月近くになり、学校関係や団体などを含め、予想通りの入場者を記録しているという。晴れると30度前後に気温は上昇するのだが、湿度が低いためか日本の夏と比較して過ごしやすい印象を受けた。
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【第68回】居住空間を持つザハ・ハディド設計の橋――スペイン・サラゴサ万博(2)
灼熱の台地スペイン・サラゴサで開かれている万博のシリーズ第2弾として、ザハ・ハディド氏設計のパビリオン・ブリッジを紹介する。
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【第67回】水をテーマにした万国博覧会へ──スペイン・サラゴサ万博(1)
サラゴサ万博(Expo Zaragoza 2008)が6月14日に開幕した。サラゴサと聞いても、日本では知名度は低いようだが、人口66万人を有するスペイン5番目の都市だ。バルセロナとマドリードから300km、今春開通した高速鉄道AVEで1時間半の距離に位置する。
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【第66回】コロシアム風の巨大な学生寮へ――コペンハーゲン・デンマーク
前回のキュービック型に続き、今回はコロシアム風の巨大な学生寮を紹介する。平等と公共性をシンボルとする円形のフォルムで、大胆かつボリュームたっぷりの集住建築として集大成的に具現化したのが、今回取り上げたTietgenkollegietである。
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【第65回】中庭をガラス張りの個室が取り囲む学生寮へ──コペンハーゲン・デンマーク
ヨーロッパの学校では、6月が卒業試験や制作の時期にあたる。空港のあるアマガー島は相変わらず住宅を中心にした建設ラッシュ。学生ドミトリー(寮)も多くできている。その中の一つ、コペンハーゲン大学アマガー校に隣接する「BIKUBEN KOLLEGIET」を訪ねてみることにした。
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【第64回】19世紀の機械工場を改修したIT企業のオフィスへ─ストックホルム・スウェーデン
健保機構ALECTAがその年に新設された執務空間を選考して授与する「スウェーデンのベスト職場賞」という建築賞がある。今年はデジタルデザイン分野で著しい成長を見せるクリエーター集団のオフィスが選ばれた。 2階建てのアトリエオフィスは、1850年建造の赤レンガ建築、ミュンヘン醸造所コンプレックスの中庭…
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【第63回】赤と白を着飾ったファッションデパートへ――スウェーデン・ベリングビー
ストックホルムの西に地下鉄で約20分の距離にあるベリングビーという街がある。1954年に建設されたショッピングセンターの老朽化に伴い昨年、モールの天井を全天候型のガラスフレームで覆うリニューアル工事が行われ、今年の5月にはファッションデパート、K-femがオープンした。
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【第62回】巨匠の家具で室内を彩られたホテルへ─ストックホルム・スウェーデン
スウェーデンの首都、ストックホルムの中心に、チョイス・ホテル・グループの「CLARION HOTEL SIGN」 が2008年2月にオープンした。2月はちょうど、市がにぎわいを見せる「ストックホルム家具&照明国際見本市」(連載50回と51回でリポート)の開催時期だ。設計はスウェーデンの著名建築家、…
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【第61回】カラトラバ設計の鉄とガラスの駅舎へ――リエージュ・ベルギー
「撮り歩記」の取材であちこち回り始めて以来、工事の進行状況が気になり、これまで数回訪ねてみた建造物がベルギーにある。ブリュッセルの東95km、ワロン地方リエージュ市に建設中の、リエージュ・ギユマン駅である。スペインの建築家サンティアゴ・カラトラバ設計の、総建設費500億円ともいわれていたこの駅舎は…
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【第60回】IT時代を象徴するデザインホテルへ──アムステルダム・オランダ
ユトレヒトから国道2号線でアムステルダムに入って環状線に合流し、時計方向に走る。スキポール空港とサーンダム方向との分岐点に差し掛かる手前で高速道路から降り、“IT時代の先駆けとなるデザインホテル”として話題となった「Qbic Hotel」を探すため、住所を確認しながらあちこちまわった。
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【第59回】不定形ドームと竹の手すりが印象的なオフィスへ――ザイスト・オランダ
オランダを車で移動して感じる利点は、15分か20分くらいで到着できる距離に都市が散在し、高速道路やバイパスが完備しているため目的地までの時間が容易に読めること。坂道がほとんどなくドライブは単純すぎるが、ドイツのアウトバーンと同じく有料道路がないので、旅を軽快なものにしてくれる。ズオレから北のグロー…
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【第58回】スレート張りの高齢者介護施設へ──ズオレ・オランダ
中世の城郭を残すズオレ市の北側に、スタッズハーゲンというニュータウンが建設中だ。総面積14300m2、建設費16億円をかけた高齢者総合の介護施設、ZONNEHUIS(ゾンネフイス)がオープンしているというので、立ち寄ってみることにした。
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【第57回】可変システムの舞台を持つ劇場へ─ズオレ・オランダ
オランダというとまず頭に浮かぶのがチューリップだろう。これからがシーズンだ。しかし、車で旅をしていても、風車を背景にカラフルにチューリップが咲いている畑にお目にかかれる機会はまずない。花は主に、有名なキューケンコフ公園に隣接する農場で栽培されているのだが、輸出用球根をより大きく育てるため、咲き始め…
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【第56回】ピクセル画像のようなファサードの動物保護施設へ─アムステルダム・オランダ
オランダを旅していると、街の建物やストリートファーニチャーなどの色使いの大胆さに目をひかれることが多い。文字通り低地で、海面との高低差がほとんどない土地柄。会った人にさりげなく聞いてみると、風の強さと天候不順に不満をぶつける人が多く、明るく楽しい要素を生活環境になるべく取り入れたいという願望がある…
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【第55回】27色の金属プレートで彩られた中学校へ──ルールモント・オランダ
「撮り歩記」ではこれまで数カ所の学校建築を紹介してきたが、教育機能面に加えて色彩デザイン的な斬新性を打ち出している学校を最近のヨーロッパでは多く見聞きする。オランダの東部、アイントホーフェンから車で30分の距離にある、ドイツと国境を接する人口5万人ほどのルールモントに今年2月、開校したニケ中学校も…
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【第54回】光のショーを繰り広げる銀行ビルへ──ブリュッセル・ベルギー
ブリュッセルで夜を彩る、ラスベガスさながらのライトショーを繰り広げるビルが出現して、話題となっている。地下鉄2号線と市内を横断するトラムが交差するロジエ広場に面して建つデクシア銀行グループの本社ビルだ。38階建てでブリュッセルでは3番目に高いこのビルは設計時に179mの高さで申請したものの、許可が…