PR

 住みやすい街、コペンハーゲンの市内を歩いてみて即座に感じられるのが、公共の交通機関がよく整備され、機能している点だ。

 自転車王国と昔から呼ばれていた国だけに、主要道路には専用車線が設けられている。バス網、国鉄の近郊ライン、カストラップ空港経由でオーレスン海峡橋を経て南部スウェーデンとリンクする路線など、首都圏の交通網はよく計画されている。それに加えて、第7回でふれた無人運転メトロの開通は、市民の足の移動を大幅にスピードアップした。地域別にゾーンを設定し、チケットをクリップ制にし、使用時間を1・1.5・2時間の三つに分けて、その間すべての乗り物に無制限に乗車できるシステムはユニークである。さすがはシンプルライフを求めてやまないデンマーク流スピリットだと思う。

メトロ沿線に立地するVMハウス
メトロ沿線に立地するVMハウス

 コンゲンスニュートウから南へM1ラインでヴェストアマガー行きに乗り、3番目の駅を過ぎると地上に出て高架線となる。すると左手にデンマーク放送シティーが現れ、巨大な建設現場を露出し始める。ここにはジャン・ヌーベル設計のコンサートホールなどがあり、今秋あたりには竣工する予定だ。しかし、経費高騰で最終総額が見えてこないせいか、国民の反感情的不満は募るばかりだと聞いた。

鳥にとっては威嚇に映る?

 国際見本市や会議場として知られるベラセンター駅近くの運河沿いにVMハウスがある。V字形のタワー1棟(Vハウス)とV字を二つ組み合わせてM字形にしたタワー1棟(Mハウス)を並列しした、この集合住宅はPLOTが設計。景観や通気性をコンセプトに盛り込んでいる。

 Vハウスの南側は芝生のある公園で、三角形のベランダが各フロアから突き出ている。よく見ると先端は3様に角度を変えているのがわかる。むき出しのサメの歯のようであり、飛ぶ鳥にとっては威嚇か、恐怖に映るのではないかと思ったりもした。建物の東側は6層で高さが約18m。中心にいくに従って高くなり、中央でやや折れて西側の突端では12層、37mの高さに変化している。中央付近は5m高さのピロティスペースになっており、バックにあるMハウスや広場が望める。不順な天候の多いデンマークでは、格好のコミュニケーションの場として受けそうな空間だ。

公園側から見たVハウス
公園側から見たVハウス
ベランダがサメの歯のように突き出ている
ベランダがサメの歯のように突き出ている

 エレベーターで上がった北側に各戸への通路がある。出版業に携わるメッテさん夫婦の住まい(109m2)を見せてもらうことにした。各アパートメントは2フロア仕様のアトリエタイプで開放感がある。キッチン、ダイニングが中央部を占め、奥は明るいリビングルームとなっている。ベランダに出てみると視線を遮る建物はなく、空中庭園にいるような爽快(そうかい)な気分になれる。「引っ越す以前は都心に住んでいたのですが、もう戻れません。わかるでしょう、この環境なら。それに購入価格もそれほど高かったわけでもないし」とメッテさんはご満悦の様子だ。

空中庭園にいるような気分になるベランダ
空中庭園にいるような気分になるベランダ
アトリエタイプの住戸
アトリエタイプの住戸

 開発が進むこの一帯はオアスタッドというニュータウンプロジェクトの住宅地区だ。建築家のダニエル・リベスキンドのマスタープランで開発が進行している。カストラップ空港までの乗り入れを計画しているメトロ2号線が完成すると、都心から空港まで十数分。時間的利便性から見て、画期的なアクセスが可能となる。

建物名:VM House
所在地:Oerestads Boulevard 57-59, Copenhagen S, Denmark
設計者:PLOT=BIG+JDS ARCHITECTS