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 千葉県我孫子市の静かな住宅街。その一画に、森のような家が登場した。まるで大きな枝を広げたような高さ3メートルほどの“樹木”がランダムに立ち、その“木陰”が家を形づくっている。半屋外のような開放的な家の中からは、数多く集まったオープンハウスの見学者たちの楽しそうな笑い声が響いてきた。

外観。樹木のような形が特徴的なユニットが、家の内部にまで続いている
外観。樹木のような形が特徴的なユニットが、家の内部にまで続いている
“幹”は緩やかな壁や仕切りとして、また天板を取り付けて机としても使うことができる。ユニットの上方には間接照明が取り付けられ、夜は照明器具としての役割も
“幹”は緩やかな壁や仕切りとして、また天板を取り付けて机としても使うことができる。ユニットの上方には間接照明が取り付けられ、夜は照明器具としての役割も

 建て主は退職を機に、夫婦でゆったりと好きなことをして過ごせる家への建て替えを希望した。そこで設計者の末光弘和氏と末光陽子氏(一級建築士事務所SUEP.=スープ)が提案したのは、樹木状のユニットである「TREEUNIT」を森のように連結させた、半屋外のような空間だ。1階は広いワンルームでありながら、奥行きと緩やかな境界が生まれた。家の中と庭先で夫婦が別々のことをしていても、適度なプライバシーを確保しながらお互いの存在を感じ取ることができる。

 TREEUNITは、末光弘和氏が構造設計者の坪井宏嗣氏とともに開発したオリジナルの木造ユニットである。平面と壁のような偏心した柱から成り、単体では自立しないものの、複数が寄り集まり構造体として成り立っている。ユニットは玄関やリビング、書斎など使う個所によって、柱の形や大きさが異なっている。幅2.7メートル×奥行き2.7メートルから3.6×3.6メートルまでの10個のユニットを個別に組み立て、現場でクレーンを使って配置してボルトで接合した。

 またTREEUNITの一部には、輻射冷房の仕組みを取り入れている。ポンプで15℃前後の井戸水を汲み上げ、木の幹を流れる樹液のように、ユニット内部に張り巡らせたチューブを循環させることで部屋の温度を下げる仕組みだ。輻射冷房の効果は緩やかであるため、通常の送風式のエアコンに慣れていると少し感じにくいのだが、送風による温度ムラや対流が起きないため、身体にも優しいということだ。結露を抑えるため、18℃以下に冷やすのを防ぐコントローラーが設置されている。

輻射冷房が設置されているユニット。手で触れると、少しひんやりしているのがわかる
輻射冷房が設置されているユニット。手で触れると、少しひんやりしているのがわかる
屋外に設置された、地下水をくみ上げるポンプ
屋外に設置された、地下水をくみ上げるポンプ

 末光弘和氏はこれまでにも自然をモチーフにした設計を数多く行ってきた。「自然と人の環境についてずっと考えている。壁が厚くて気密性が高く、外の世界や自然をシャットアウトする建築が多く見られるが、それでは人間は弱ってしまうのではないか。昔の人が自然を生活にうまく活用していた知恵に学び、自然との結びつきを高めることで人間のエネルギーを引き出せるようにしたい」(末光弘和氏)。

 竣工してみると、ずらして設置したユニットがうまく目隠しになっていた。せっかく手に入れた半屋外の開放感を楽しみたいこともあり、ハイサイドガラスに当初設置する予定だったブラインドやカーテンは取り付けないことにした。好きなことをしてゆったりと過ごす時間にぴったりの舞台だといえる。TREEUNITはこの家のために開発したものだが、今後住宅以外の用途も含めて展開していきたいということだ。

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