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 カルマルといえば中世のバルト海の覇権をめぐって、デンマーク王国を盟主にしてスウェーデン、ノルウェーの三国間で締結されたカルマル同盟を思い起こす人が多いことだろう。バイキング時代以降、日本の歴史教科書に載っている数少ない記述の中の一つで、対ハンザ同盟として北欧の結束を固める盟約であったらしい。カルマル海峡を通過する貿易船などから通貨税を取り立て、デンマークの貴重な財源とし、やがてバルト海の覇権を握ることとなる。その歴史の舞台となったカルマル城に隣接する市公園内に今春に開館したカルマル美術館を訪ねてみることにした。

Kalmar Kunstmuseum
黒塗りのプライウッドとガラスで構成された美術館のファサード
Kalmar Kunstmuseum
公園内に控え目にたたずむ美術館、後方に見えるのはカルマル城

 城をよく眺められる公園が広がり、周辺は閑静な住宅街になっている。歴史を感じさせられるような小路が、時間限定の無料駐車スペースになっているのには驚いた。開館前に早く到着。きれいに手入れされている庭園の巨木に囲まれ建っている、黒のボックス形の美術館の周りを散策しながら館長、クラース・ボリエソンの到着を待った。

 土曜日だったせいか、ペットの散歩とかジョギングで公園を通り抜ける人以外ほとんど人影がなく、建築が静かな環境に控え目に溶け込むような印象は、他の都市では味わえない設定が感じられる。館長は従業員より早く自転車で出勤、搬出用のドアを開け、セキュリティーチェックをしてエントランスドアを開ける、飾り気ない真摯なスタイルはスウェーデンらしいところだ。

 モダンアートの新美術館の建設が市議会で決定。2004年に日本を含めた15カ国から参加があった国際設計コンペで、294のエントリーから選ばれたのはスウェーデンのタム&ヴィデゴード・ハンソン設計の“プラットフォーム”と名付けられた4層のボックス形の建物であった。「1937年のパリ万博でスウェーデンパビリオンの設計者として著名なスヴェン・イーバル・リンド設計の、コンクリートが波打つようなレストランに隣接するという立地条件がある。ほとんどの案は平屋造りの延長を試みたモダンデザインであったが、この作品だけは極端に敷地面積を抑え、長い歴史ある市民の憩いの場を最大限確保するアイデアが決め手になった」と選考委員でもあった館長のボリエソン氏。

Kalmar Kunstmuseum
美術鑑賞の透明性や環境の良さを誇らしげに語る館長のクラース・ボリエソン氏
Kalmar Kunstmuseum
壁板の廃材をリサイクルしたアート越しに見るカルマル城

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