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 「建築と植物は視覚の面で相いれないもの。その唯一に近い例外が芝棟だ」。こう藤森照信氏は説明する。ピラミッドのように盛り上がった萱葺き屋根に緑がほんの少しだけ顔をのぞかせる。日本とフランスのノルマンディ地方だけに見られる建物だ。雪国以外の地域で、防寒のために屋根に土をかぶせ、土が流れないように草を植えることがあった。戦前は日本全国に存在したものの、今は100棟残るかどうかだという。

 屋上庭園は世界中にある。しかし、藤森氏は視覚の面で建築と合っていないと感じている。「庭園にいる間は建築を忘れているし、外から建物全体を見ると変なものが生えているという感じがする。恐らく人間は直線やピカピカ光るものを見た時と同様に、人工のものと自然のものとを識別する敏感な能力を持っているからだろう」。


岩手県大野村の水沢、萩の渡の民家。萱葺き屋根の上に植える草は、アヤメ科のイチハツやアイリス、イワヒバ、ニラなど。フランスではイチハツだけだ。芝棟は九州から青森で見ることのできる民家で、縄文時代以来、約5000年にわたって建設されてきた。だが、戦後になって萱葺き屋根が減少すると共に急速に消えてしまった(写真:モダンリビング/藤塚 光政)

藤森 照信(ふじもり てるのぶ)
1946年生まれ。71年に東北大学建築学科を卒業、78年 に東京大学大学院博士課程を修了し、98年に東京大学生産技術研究所教授 に就任。「建物に自然を寄生させる」というコンセプトで「タンポポハウス」や「ニラハウ ス」を設計した。2001年に「熊本県立農業大学校学生寮」で日本建築学会賞作 品賞受賞