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戸建てとしてストックホルム初のパッシブハウス(無暖房住宅)となったグランベックさん宅 (写真:武藤 聖一)

 「省エネ」なる語がメディアをにぎわすようになってから久しい。たぶん第一次オイルショックの直後からだったと記憶する。だれもが安易に使用し、親しみのあるフレーズではあるが、その中身は限りなく抽象的で、多面的な測り知れなさを感じさせる。

 住宅建築の視点からみた場合、家庭内の消費エネルギーの多くを占める暖房費は、寒冷地の北欧では特に重要な国民の関心事。最近のように原油価格が高騰すると直接家計に影響を及ぼすため、これまで国家レベルで十分研究し尽くされ実践されてきたことは、小欄「撮り歩記」第23回でも触れたとおりである。

 その中で、エコロジー的で省エネ技術を駆使した“パッシブハウス”(無暖房住宅)と呼ばれる住宅が最近関心を呼んでいて、ストックホルムで初の戸建て住宅が竣工間近だと聞き、アルランダ空港近くにあるアンドレアス・グランベックさん宅を訪ねてみることにした。

 既に完成して住んでいる裏側の建物は104m2で、2階建ての第二期部分が完成すると199m2の邸宅となる。工事現場となっている南側のファサードを見ると、窓は壁にスリットがいくつかあるだけで、通常の家屋の北側部分を見ているような意外な光景が印象的だ。

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窓を厚い壁面の中間地点に設計。外に設けた小さなひさしは、夏季にはルーバーの効果を期待できるという (写真:武藤 聖一)
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断熱を十分に機能させるため複数の素材を組み合わせ、外壁の厚さはトータルで515ミリになる (写真:武藤 聖一)
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窓際は彫刻的に変化のあるデザインにしている (写真:武藤 聖一)

 アンドレアスさんは建築家ではないが、間取りデザインなどはリンダさんと一緒に知恵を出し、最終的な設計を建築家に依頼したという。

 「パッシブハウスの工法は一般住宅と大差はなく簡単。ただ、素材の選択、完璧な断熱処理、それに通気と換気の3点をの徹底するだけだ」と強調するアンドレアスさん。

 工事中の窓際の外壁は、断熱材と数種類の素材を張り合わせたようで、その幅を測ってみたら、なんと515ミリほどあったのには驚きだ。窓枠は極端に狭くした設計で、窓を壁芯に設置してある。外側は直射日光を遮るためにルーバーのようの小ひさしを設け、全体を彫刻的に仕上げているのも特徴の一つである。

 年間の暖房エネルギー消費量は12KWh/m2。厳寒期に多少の暖房を必要とするものの、夏は涼しく冬は暖かい。年間を通して快適な生活ができる。

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パソコン画面で電気の消費データをチェックできる (写真:武藤 聖一)
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空調やヒートポンプなどの機器管理室 (写真:武藤 聖一)

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