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 ドイツ西部、オランダとの国境寄りに人口16万人のオスナブリュック市がある。観光的にはあまり聞きなれない地名ではあるが、三十年戦争の終結和睦が成立した1648年、ウェストファリア条約の締結で、ミュンスター市とともに歴史的舞台となった地として知られる。この講和条約は今日の国際法のモデルとなって受け継がれ、現在でも旧市庁舎の1階ホールにその名残ある空間をとどめている。

イルミネーションが輝くオスナブリュック旧市街(写真:武藤 聖一)
イルミネーションが輝くオスナブリュック旧市街(写真:武藤 聖一)

 今年の夏、福岡に帰った折、プロトハウス主催の「日本は一つの大きな森」と題する勉強会があり、新日鉄都市開発の吉田秀照氏とお会いした。吉田氏は現在、環境省の助成を得てCO2、20%削減を手掛けている北九州市八幡地区の集合住宅「リビオ東田ヴィルコート」の主導的立場にある人だ。氏と「クリスマス前にオスナブリュックに出かけるので会いしましょう」と話して、その日は別れた。そして12月第2週、吉田氏はフランクフルトからICE(Inter City Express)、私はアムステルダムからIC(Inter City)の列車でオスナブリュックへ。その到着、わずか数分の差で再会が実現した。

道路側から見るドイツ連邦環境財団(DBU)オフィス棟(写真:武藤 聖一)
道路側から見るドイツ連邦環境財団(DBU)オフィス棟(写真:武藤 聖一)

 市街地の一角に、ドイツ連邦環境財団(DBU)がある。DBUは国営鉄鋼会社、ザルツギッター社の民営化で得た資金、当時の貨幣にして25億マルク(約225億円)をもとに1990年に設立されたドイツ最大、環境財団としてはヨーロッパ一を誇る組織だ。元々、ニーダーザクセン州にあった企業ということで、本部は当地に置くこととされた。常識的には州都のあるハノーバーに決まるところだが、このオスナブリュックが本拠地として選ばれた。国家機関の地方分散政策の精神が生かされた感じだ。

ソーラーパネルなども実践完備してあるDBUのオフィス(写真:武藤 聖一)
ソーラーパネルなども実践完備してあるDBUのオフィス(写真:武藤 聖一)

柔らかな自然光がくまなく行き渡るオフィス内(写真:武藤 聖一)
柔らかな自然光がくまなく行き渡るオフィス内(写真:武藤 聖一)

 財団本部は95年、建築家、エーリッヒ・シュナイダ-・ベスリンク教授の設計で建設された。中小企業の環境問題についての実践的解決策を生みだし、エコロジ-分野など革新性を追求するプロジェクトの助成を主目的にしている。連邦政府から任命された14人の管理委員と120人のスタッフが集う、環境問題に立ち向かうナビ頭脳軍団と言えそうである。

針葉樹と広葉樹をバランスよく植えてある庭園(写真:武藤 聖一)
針葉樹と広葉樹をバランスよく植えてある庭園(写真:武藤 聖一)

ブナの木を取り囲むように設計されているオフィス棟(写真:武藤 聖一)
ブナの木を取り囲むように設計されているオフィス棟(写真:武藤 聖一)

 建物は庭園の緑を取り囲むオフィス棟と広報用の展示及び会議室棟からなる。植栽の散水利用を兼ねたビオトープのアイデアもさることながら、オフィスの窓には表面に金属膜をコーティングした、アルゴンガス封入のLow-E複層ガラスが採用されている。「室内の熱損失を25%セーブし、ドイツの気候に合った処理方法を、既に10数年前に実践していたという視点には感心する」と吉田氏。「中庭のブナの枝葉がオフィス窓の日陰となり、夏場の気温上昇を防ぐ。合理性を追求するドイツ人の真摯で素朴な姿勢と見て取れる」と言う。

メインテナンスを軽減するため、鉄骨は亜鉛メッキしてあるだけ(写真:武藤 聖一)
メインテナンスを軽減するため、鉄骨は亜鉛メッキしてあるだけ(写真:武藤 聖一)

緑化してある吹き抜けはさわやかな感じ(写真:武藤 聖一)
緑化してある吹き抜けはさわやかな感じ(写真:武藤 聖一)

◆next:革新性や応用性をポイントに助成を判断