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 商業都市フランクフルトの西30キロほど、ライン川とマイン川との合流点にマインツ市がある。近代印刷の画期的な発明者として知られる、グーテンベルクの生誕地でもある。

 ライン川下りの観光やビジネスのついでに川を身近に観察したことのある人なら、頻繁に行きかう運搬船の光景を目にした事があるだろう。人口20万のマインツは河川交易の中継基地とし発展してきた。今回は、この港の税関施設だったエネルギー供給センターが、モダンな市美術館として大変身を成し遂げたマインツ・アートギャラリー(Kunsthalle Mainz)を訪ねた。

 中央駅から徒歩十数分の距離なのだが、意外に長く感じた。港近くの葉を落としたプラタナスの街路樹の間から、バーチャルの世界で描いていた美術館を確認できた。エントランスのゲートの左側に現役を引退したSL(蒸気機関車)がノスタルジックな雰囲気を盛り上げている。

マインツ・アートギャラリー(Kunsthalle Mainz)
港側の広場から見る美術館。今回増築したタワー部分が空地側に7度傾いている (写真:武藤 聖一)
マインツ・アートギャラリー(Kunsthalle Mainz)
カフェ前からエントランスタワーを見上げる (写真:武藤 聖一)
マインツ・アートギャラリー(Kunsthalle Mainz)
エメラルドグリーンと旧建物のレンガと花崗岩の質的コントラストが鮮やか (写真:武藤 聖一)
マインツ・アートギャラリー(Kunsthalle Mainz)
エントランスにあるSL(蒸気機関車)の展示 (写真:武藤 聖一)

 建築家、Zamp Kelp教授が手掛けたこの美術館は、コンテナなどが並ぶ埠頭に面して建っており総展示面積が840m2ある。花崗岩とタイル張りのどっしりした長い建造物が途中で分断された格好になっている。エメラルドグリーンのガラスパネル張りで高さ21mの平行四辺形のタワー空間が新築された部分で、エントランスのハイライトシーンだ。7度の角度で広場に傾いているところにボリューム以上の迫力が感じられる。傾斜する建物内は垂直に上下するエレベーターと階段で三層がつながれ、展示スペースはそれぞれ65m2となっている。歩いて上がると空間シミュレーションでテストされているような錯覚に陥りそうになる。最上階のゆがんだ窓ガラスからは港から広がる遠景が望め、超越した建築空間を体験できる。

マインツ・アートギャラリー(Kunsthalle Mainz)
窓越しに見るコンテナ埠頭 (写真:武藤 聖一)
マインツ・アートギャラリー(Kunsthalle Mainz)
タワー最上階の、斜角の窓から見るライン川と港の風景 (写真:武藤 聖一)
マインツ・アートギャラリー(Kunsthalle Mainz)
階段際の変形エレベーター (写真:武藤 聖一)

 パリのルーブル美術館は、地殻変動で内庭にピラミッドが突如と現れたという発想が世間を圧倒した。このコンセプトに例えれば、マインツ・アートギャラリーは地震源となった断層だと表現できそうだ。エネルギッシュな空間に、驚きとともに魅了された。

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