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 ドイツと国境を接するフランス東部のストラスブールは欧州議会や人権裁判所などがあり、国際都市としての色彩を増しつつある。TGVの東ヨーロッパ線が開通し、パリと2時間20分ほどの距離になったことは、「撮り歩記」第33回でリポートした通り。ミュンヘンやスイスのチューリッヒへ向かう際の中継駅となり、シュツットガルト駅への所要時間は1時間20分ほどだ。

 この駅に来るたびに感じさせられることがある。旧駅舎を残してガラスフレームで覆い、低床トラムを導入し、地下深く2層下でクロスして市の中心部と郊外を結ぶ起点としている点だ。駅前広場は整備され、街全体がすっきりしている。我が国の新幹線駅や、地方都市の駅中心の再開発に、このストラスブールのような発想がなぜ出てこないのだろうか。

南側のファサードはいたって穏やかな表情だ(写真:武藤 聖一)
南側のファサードはいたって穏やかな表情だ(写真:武藤 聖一)

ファイバーテキスタイルの皮膜が音楽ホールを包む(写真:武藤 聖一)
ファイバーテキスタイルの皮膜が音楽ホールを包む(写真:武藤 聖一)

 ゼニス音楽ホールは、ストラスブール駅からトラムでわずか10分足らずの郊外、市の西側数kmのEckbolsheimに位置する。コンサートが催される日は相当の利用者があるのだろう。トラムの終点からホールまでは車、自転車、歩行者用の道路標識があり、適切に誘導してくれる。陸上競技場とサッカー施設を迂回(うかい)して10分ほどで、かぼちゃ色に包まれた音楽ホールが見えてくる。

二重に金網の塀が取り付けられ、セキュリティーは厳重である。パフォーマンスのない日はゲートが開かないので、建物には近づけない(写真:武藤 聖一)
二重に金網の塀が取り付けられ、セキュリティーは厳重である。パフォーマンスのない日はゲートが開かないので、建物には近づけない(写真:武藤 聖一)

 設計はリトアニア系のイタリア人建築家、マッシミリアーノ・フクサス。総工費約65億円、高さ20m、延べ面積1万6000m2、1万人収容のコンサートホールは2008年1月にオープンした。国道351号沿いの約25ヘクタールの広大なスペースに3000台分の駐車場を設けてあるのも、ヨーロッパでは並外れのスケールと言えよう。

3000台収容できる広大な駐車場から見るミュージックホール(写真:武藤 聖一)
3000台収容できる広大な駐車場から見るミュージックホール(写真:武藤 聖一)

身障者用の入り口も特別に設置している(写真:武藤 聖一)
身障者用の入り口も特別に設置している(写真:武藤 聖一)

 鉄筋コンクリート造のホール本体の周りには、メタルリングが楕円状に積み重ねられている。このメタルリングの周囲をグラスファイバーのテキスタイルにシリコンで両面コーティングした膜で覆ったフォルムはダイナミックだ。

ロビー。日中光を透過して皮膜はより明るさを増す(写真:武藤 聖一)
ロビー。日中光を透過して皮膜はより明るさを増す(写真:武藤 聖一)

 北側に面したエントランスのあるロビーには、傾斜する巨大な柱が整列する。床面にしっかりと固定された柱は、そこから延びるロッドとともに管状のメタルリングを支えている。外皮の膜はメタルリングにボルトで固定。リングとリングの間にケーブルを取り付け、シャープな折り目のあるランタンのような彫刻的な表面仕上げとなっている。

メーンエントランスロビーの見上げ(写真:武藤 聖一)
メーンエントランスロビーの見上げ(写真:武藤 聖一)

支えているロッドの数は意外に多い(写真:武藤 聖一)
支えているロッドの数は意外に多い(写真:武藤 聖一)

◆next:外側の膜にライブ映像を投影