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円と直線を自在に駆使し「天野流」に深化

 天野はこれ以前に「新花屋敷ゴルフクラブハウス」(1959年、現存せず)を手がけた。比較すると、1階を事務室やロッカー室とし、2階に見晴らしの良い食堂やラウンジを置いた構成は一緒だが、全体の印象は大きく違う。

 新花屋敷ゴルフクラブハウスは、野石積みと大きく持ち出した屋根が組み合わさって、ライトの「落水荘」(1935年)を思わせる。それに対して、こちらは強い形が影を潜め、円と直線による構成が前面に出ている。

 事前に新花屋敷ゴルフクラブハウスを視察した役員が荒々しくないイメージを希望したからと言われるが、それだけではないだろう。タリアセンで体得したものが、より単純な形態をとることで、「天野流」と呼べる個性に深化しているのだ。

 食堂まわりには、タリアセンの記憶が具体的に現れている。特徴的な柱の形や、その上部からの採光はタリアセン・ウエストを連想させる。外に南バルコニーが続き、庇の鼻先に突起があるところもそうだ。天井高を部分的に変えて、集いの場所という性格を際立たせている点も、ライトの空間に実際に身を置いた建築家らしい。

2階の食堂。窓とトップライトから光を採り入れている。吊り下げ照明は後で取り付けたもの (写真:倉方 俊輔)
2階の食堂。窓とトップライトから光を採り入れている。吊り下げ照明は後で取り付けたもの (写真:倉方 俊輔)

円と直線を組み合わせた特徴的な柱。食堂まわりに用いられている (写真:倉方 俊輔)
円と直線を組み合わせた特徴的な柱。食堂まわりに用いられている (写真:倉方 俊輔)

西バルコニーから南バルコニーを見る。庇の鼻先はライトが好んだデザイン。タリアセン・ウエストでは正方形の突起が取り付けられている (写真:倉方 俊輔)
西バルコニーから南バルコニーを見る。庇の鼻先はライトが好んだデザイン。タリアセン・ウエストでは正方形の突起が取り付けられている (写真:倉方 俊輔)

バルコニーから見た2階の食堂。円と直線を組み合わせた列柱が内外をまたいでいる (写真:倉方 俊輔)
バルコニーから見た2階の食堂。円と直線を組み合わせた列柱が内外をまたいでいる (写真:倉方 俊輔)

食堂カウンターの二重天井。円と直線を組み合わせていて面白い (写真:倉方 俊輔)
食堂カウンターの二重天井。円と直線を組み合わせていて面白い (写真:倉方 俊輔)

 しかし、その他の反映はもっと抽象的なものだ。平面中央には談話室や厨房(現在は記念室)を納めたコアがある。東西のバルコニーや浴場(現在はロッカー室の一部)と同様に、壁が弧を描いている。ラウンジの暖炉からトップライトまで、円形はこの建物のテーマになっている。

壁で囲われた2階の談話室。上部から自然光が落ち、食堂と同様に下から人工照明が照らす (写真:倉方 俊輔)
壁で囲われた2階の談話室。上部から自然光が落ち、食堂と同様に下から人工照明が照らす (写真:倉方 俊輔)

2階の談話室を見上げる。馬蹄型のコアの形状が良く分かる。曲面の壁が光を拡散させる (写真:倉方 俊輔)
2階の談話室を見上げる。馬蹄型のコアの形状が良く分かる。曲面の壁が光を拡散させる (写真:倉方 俊輔)

新たな厨房を増設した1986年に、記念室に改装された旧厨房 (写真:倉方 俊輔)
新たな厨房を増設した1986年に、記念室に改装された旧厨房 (写真:倉方 俊輔)

1階の旧浴場はロッカー室に改造された。1978年に浴場を新設したため (写真:倉方 俊輔)
1階の旧浴場はロッカー室に改造された。1978年に浴場を新設したため (写真:倉方 俊輔)

屋上から東バルコニーを見下げる。人工の曲線はゴルフコースに連続するかのよう (写真:倉方 俊輔)
屋上から東バルコニーを見下げる。人工の曲線はゴルフコースに連続するかのよう (写真:倉方 俊輔)

食堂のほか、2階にはラウンジが設けられている。中央に設けられた円筒形の暖炉 (写真:倉方 俊輔)
食堂のほか、2階にはラウンジが設けられている。中央に設けられた円筒形の暖炉 (写真:倉方 俊輔)

暖炉は現在も使用できる。耐火れんがも当初のもの (写真:倉方 俊輔)
暖炉は現在も使用できる。耐火れんがも当初のもの (写真:倉方 俊輔)