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 北海道江差町。北前船の終着地やニシンの漁場として江戸時代から栄えてきた町だ。往時の面影は残るが、過疎化が進んでいる。

 江差でいくつもの事業を営んできた実業家が、「ふるさとを何とかしたい」という一念で2009年5月、「群来(くき)」という旅館を開業した。設計は札幌の建築家、中山眞琴氏。小樽の「蔵群(くらむれ)」(02年完成)、登別の「望楼(ぼうろう」(06年)と、北海道で、「客が呼べる旅館」を設計した実績がある。

 木造平屋、7室のみの隠れ家のようなつくりだ。どの部屋からも、鴎島(かもめじま)が浮かぶ日本海を眺めることができる。海辺の原っぱだった敷地を最初に見たときから、「木造でつくりたい」と中山氏は決めていた。

 依頼を受けてから江差の歴史を改めて調べ、「深いところで町の歴史を継承していく、モダンでありつつ昔からそこにあったようなたたずまいの建築」(中山氏)を目指した。風土に合った人間と建築の関係、江差らしさをどうやって出すか。地元のものを中心に、石や木といった自然の材料を使い、時間がたつとより生き生きとするように考えた。

敷地内の南西側から客室を見る。各部屋を隔てる壁は切り離されていて、独立した一軒家のように空間も景色も確保している(写真:KEN五島)
敷地内の南西側から客室を見る。各部屋を隔てる壁は切り離されていて、独立した一軒家のように空間も景色も確保している(写真:KEN五島)