保険屋が見た「建築のプロ責任」
目次
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事務所協会の責任:研修会の改革で期待に応えよ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(78)
前回のコラムでは、全国各地の建築士事務所協会が催す設計事務所の開設者向けの管理研修会について、受講者が少ないことを書いた。それに対して、研修会の講義内容が聴くに値しないと感ずるからこそ出ると思われる“本音”が、読者からたくさん寄せられた。
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行政の責任:開設者に倫理研修の受講を促せ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(77)
「新しい建築士事務所の業務と展望」というテキストがある。表紙には「建築士法第27条の2第7項に基づく開設者・管理建築士のための建築士事務所の管理研修会」と長たらしい添え書きがある。
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国の責任:不正を生む入札制度にメスを入れよ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(76)
日事連の建賠保険では、建築士事務所の前年1年間の設計料と監理料の合計金額を申告してもらい、それに料率を乗じて年間保険料を決定している。その際に問題になるのが、設計料の申告額である。
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保険会社の責任:驚きの建賠廃止、加入者救済を
保険屋が見た「建築のプロ責任」(75)
2014年2月13日のケンプラッツは「全日本建築士会の建築家賠償責任保険を廃止」と、驚きのニュースを報じた。これまでに、日新火災海上保険で保険に入っているという話を聞いた経験が2度ある。
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保険屋の責任:建築事故のデータを予防につなげる
保険屋が見た「建築のプロ責任」(74)
建賠保険(日事連・建築士事務所賠償責任保険)に画期的な特約が開発され、2014年4月1日に改定される。日事連の建賠保険等専門委員会の手になる「建賠がパワ-UP」というタイトルのカラー刷りのチラシもリリースされた。
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知事の責任:朱鷺メッセ事故を風化させるな
保険屋が見た「建築のプロ責任」(73)
新潟市の万代島にある、県の総合施設である朱鷺メッセと佐渡汽船ターミナルを結ぶ連絡通路の一部が崩落した事故の裁判が、事故後10年もたってようやく和解成立という形で決着した。
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建築家の責任:新国立騒動、五輪成功への提言を
保険屋が見た「建築のプロ責任」(72)
「『鈴木俊一と丹下健三』を徹底批判する」と題する故・黒川紀章氏によるレポートが月刊「現代」1991年9月号に載っていた。表題には「21世紀の東京のためにもうガマンできない」と添えられている。弟子による恩師への抗議である。
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設計業界の責任:建築賞を社会に開こう
保険屋が見た「建築のプロ責任」(71)
建築設計業界においても、各種の賞が存在する。事件によって少し色あせた感があるとはいえ、日展に比肩するような建築賞は思い当たらない。いまひとつピンとこないのだ。それは、受賞作品が竣工から間もなく雨漏りしたり、外装材が落下したりという事故を時々体験することによる。
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設計者の責任:トラブル回避へ報酬の再点検を
保険屋が見た「建築のプロ責任」(70)
昨今、数パーセントの設計報酬で、何億円にも上る賠償に応じなければならない事件が続発している。裁判沙汰となった時には、設計報酬と賠償請求額との間には、通常、何の相関関係も存在しない。
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国の責任:公平で独立した事故調を設置せよ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(69)
テレビのニュース番組の画面には、相変わらず連日のように、どこかの有名企業の幹部が深々と頭を垂れ、「ご迷惑とご心配をおかけし、大変申し訳ございませんでした」と謝罪する姿が映し出される。日本国中、不祥事だらけで手に負えない。
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日本人の責任:心を合わせピンチをチャンスに
保険屋が見た「建築のプロ責任」(68)
リスクマネジメントといえば、世間の注目するところはわが国の原発政策であろう。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」発言が各所に波紋を広げているようだ。「核のごみ処分場のあてもないのに、原発を進めるほうがよほど無責任ではないか」と主張しているという。
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社長の責任:最高責任者として潔く身を処せ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(67)
貨物列車の脱線事故に端を発したJR北海道の安全無視事件の異常さには、ただ、あきれ返るばかりである。安全管理上の深刻な病巣を抱えていると思えてならない。少なくとも企業組織が、最高責任者たる代表取締役の“under control”の状態にあるとはとても思えない。
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建築界の責任:おもてなし五輪、言葉に潜む危険を知ろう
保険屋が見た「建築のプロ責任」(66)
めでたく2020年東京五輪が決定した。海外からのお客様の「おもてなし」に欠かせないのは、なんといっても日本人の「心」であるが、その前にそれを伝えるための言葉の問題がある。筆者が外資系保険会社に在籍していた頃の話である。
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つくり手の責任:既存不適格は免罪符にならない
保険屋が見た「建築のプロ責任」(65)
1922年に建てられた酒蔵が、社員研修所として生まれ変わったことが、7月25日号の日経アーキテクチュアでレポートされていた。「執念で残した木の架構」という見出しで掲載された。素直に喜んであげればよいところであるが、安全の在り方について、保険屋は少し考え込んでしまった。
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庶民の責任:切れた「絆」をつなぎ直そう
保険屋が見た「建築のプロ責任」(64)
コンビニ店舗の敷地内のスロープで転倒したその店の店長が、コンビニ本部を相手取って、訴えを起こし約520万円の損害賠償を勝ち取った。民法717条の「土地の工作物責任」をめぐる訴訟である。6月10日号の日経アーキテクチュア誌上の「すぐ役立つ判例解説」という連載コラムに「スロープでの転倒で占有者に賠償責任…
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判事の責任:自らの良心に従い公正な裁判を
保険屋が見た「建築のプロ責任」(63)
世間を騒がせる事故の決着が、被害者にとって納得できる形に収まることは少ないような気がしてならない。明石歩道橋事故、三菱ふそうトラックのタイヤ脱落事故、JR福知山線の脱線転覆事故、イージス艦衝突事故等々、被害者にとっては非情とも思える判決が次々と下されている。
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開設者の責任:職能・業界団体に属する意義を見直せ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(62)
「福島第1原発元所長 吉田昌郎氏 死去」と7月10日付の日経新聞朝刊は報じた。58歳の若さである。もう少し長生きしていただいて、今後の原発の安全の確保や廃炉へ向かっての現場作業の在り方などについて、貴重な情報を提供してもらいたかったものである。修羅場の現場指揮官でなければわからないことが、山ほどあっ…
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国の責任:笹子事故を教訓に「心」の教育を
保険屋が見た「建築のプロ責任」(61)
ケンプラッツの6月21日付の記事「笹子事故の最終報告書、主な原因は解明できず」を読んで、ここにも、また、反省する気のない人たちの行動を垣間見るようで、やりきれない思いになった。アンカーボルトの径が、設計図書とは異なった施工であった。さらにはその径はトンネル全体では一貫性がないのだという。アンカーボル…
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裁判官と弁護士の責任:言を弄すな、真実を語れ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(60)
「誤判」という深刻な話題について、いつかリポートしたいものと考えていた。そこへ「『弁護士保険』でトラブル、費用負担、損保へ高額請求相次ぐ」と、弁護士による不祥事が6月2日付の日経新聞に報じられ、引き続いて後述するような警察官による事件なども重なった。いずれも誤判にかかわりを持つ人たちである。そして、…
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国の責任:リスクマネジメントに真摯に取り組め
保険屋が見た「建築のプロ責任」(59)
古くからの知人に、リスクマネジメントのプロがいる。マーシュブローカージャパン(Marsh Broker Japan)の社長をされていた松澤光雄氏である。日本のトップ企業のために、世界を飛び回り、企業のリスクヘッジの究極の手段ともいえるキャプテイブ構築などの業務をされてきた。現在はRGA再保険会社(R…