「大工は几帳面」という印象
他にはどんな【誤解】があったのだろうか? 例えば賃貸に関しては下記の設問(Q11)が入った。
b 隣の家の窓と面している(3点、72.3%)
c お墓がベランダから見える(0点、4.1%)
d 高圧線のそば(0点、11.2%)
出題者はハウスメイト・東東京支店長の谷尚子さん。彼女の経験に照らして、入居後に多いクレームが選択肢に挙がっている。谷さんいわく、交通量にもよるが「車道に面して」いる物件は、短時間の内見では気付かない夜間の騒音やトラックなどの振動などでクレームが生じやすい。回答者の多くが選んだ「隣の家の窓と面している」物件は、カーテンなどの工夫で対応できるためあまり問題になったことはないそうだ。住まい手は「視線」を注意しがちだが、実際に入居すると「音」が一番気になるということだろう。
また、建設現場についての設問(Q12、Q13)も複数、誤解されていた。
b 粘着質・執着がある性格(10点、4.8%)
c 几帳面さ(5点、47.4%)
d 器用さ(3点、6.0%)
b 水が漏れているから、使えなくすること(10点、5.3%)
c お金の割に手間が掛かり過ぎるから、諦めること(0点、2.6%)
d 音鳴りがする部分を、何かで埋めて音を出さなくすること(0点、83.4%)
大工の素質について、回答は「先を読む力」と「几帳面さ」に二分したが、本来大工に求められるのは単調な作業にも創意工夫を常に探求する「粘着質・執着がある性格」といったもの。一般の住まい手が抱く大工のイメージと実際のそれにはギャップがあるようだ。また、建設現場で使われる言葉「なくからころす」も知らないもの。大多数が「音鳴りがする部分を、何かで埋めて音を出さなくすること」と誤解した。
今回は、回答者の多くが間違った説問を分析してみた。前回の「常識」の設問と比べ、もともとの知識が無いことや誤った知識に引っ張られたことが、これらの設問の平均点の低さにつながったといえる。専門的な知識や経験者の立場に立った推論が必要だといったカテゴリーの性質上、少々難しく感じる設問が並んだ。ただし、「誤解」の原因を丹念に探ると、税金や保険の金額への期待の大きさや、リフォーム未経験者の事業者へのシビアな姿勢など、住まい手の思惑が見え隠れした。
次回は最終回。半年間にわたった「すまいダービー」で、実際に高得点を獲得した回答者を紹介する予定だ。