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 近年、若者の旅行離れが進んでいるという話をよく耳にする。インターネットの普及によって、国内でも海外でもこれだけ手軽に情報が得られるようになると、わざわざ足を運ばなくてもそこに行った気分になれる──そんな気持ちになるのも分からなくはない。

 それでも、名の知れた歴史遺産にはやはり、実物だけが持つインパクトがある。その場所にたどり着くまでの道のりに歴史的なドラマがあり、その建物を目の前にすれば、実物の大きさや、逆に小ささ、手触りや匂い、日差しや湿気を感じる。書籍『旅行が楽しくなる 日本遺産巡礼 東日本編』、『同西日本編』では、文章担当の磯達雄とイラスト担当の筆者(宮沢)がそんな歴史遺産を実際に訪れ、現地で心を強く動かされた傑作中の傑作を東日本で30件、西日本で30件選んでリポートした。

 書き出しがインターネット批判のように聞こえたかもしれないが、そうではない。インターネットは「現地での予想外の体験」を導き、その体験を裏付ける様々な情報を与えてくれる。我々2人も、インターネットのない時代だったら、参考文献を探すことすらできなかっただろう。そういう意味で、今の時代は、素人が歴史遺産を「それぞれの方法」で面白がれる時代だ。

 さて、今回は東日本の仰天遺産ベスト5(宮沢選)の後編である(前編はこちら)。筆者が第2位と第1位に選んだ建物をリポートする。いずれも一般的なエリア別ガイドブックにでかでかと載っている建物ではない。筆者も、インターネットで調べられる時代でなかったら、一生、行くことがなかったかもしれない。インターネットに大感謝である。

ぐねぐね屋根の謎の神社

東日本の仰天遺産・第2位:岡太神社・大瀧神社
福井県越前市/江戸時代末期

 ある雑誌の日本建築特集に、ぐねぐねした屋根の写真が小さく載っていて、「なんじゃこりゃ」と思ってインターネットですぐに調べた。場所は、福井県の越前市(注:この本では選出した60件を30件ずつに分ける都合上、福井県は東日本編に収録している)。「岡太(おかもと)神社・大瀧神社」という聞いたことのない神社だった。

 2つの神社の名前が併記されているのは、岡太神社と大瀧神社の共有社殿だからだ。山の頂上付近にある上宮には、紙祖神(紙すきの神)をまつる岡太神社と、大瀧神社の両本殿が並んで立っている。ぐねぐね屋根のこの建物は、山のふもとに建つ下宮社殿で、両社の共有物となっている。社殿というよりシェア殿か。

 この建物は1843年(天保14年)に建設された。棟梁は、永平寺の勅使門も手掛けた大久保勘左衛門という人物であるという。1984年に国の重要文化財に指定されている。


こんなにすごいのに、誰も見に来ていない…
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