木の単板(ラミナ)を互い違いに積み重ねて接着した板、CLT(クロス・ラミネイテッド・ティンバー、直交集成板)は、国産材の利用促進が期待される新しい木質建材だ。ただ、面倒な構造計算が必要、材料費が高いという課題がある。中小建築物での導入事例を基に、効果的な活用方法を考える。
下の医院併用住宅は、2階が2m以上オーバーハングしている。床を支えているのは、厚さ150mmのCLTを使用したフラットスラブだ。2015年5月に完成した。オーバーハングさせたのは、1階で開業する整骨院用の駐車スペースを敷地内に複数台分確保し、2階に主要な居住空間を納めるためだ。
単純梁で2m以上の跳ね出しを支えるには、梁せいが約360mmは必要だ。2階床の仕上げ材から1階天井までの厚さは約680mmになる。
「この厚さをもっと薄くできるなら、高額なCLTでも利用価値がある」。鍋野友哉アトリエ/TMYA(東京都世田谷区)社長の鍋野友哉さんは採用を決断。厚さは370mmとなり、単純梁を使うより310mm薄くなった。
CLTを構造材として使う場合の課題は、時刻歴応答解析という面倒な構造計算が必要になることだ。鍋野さんはそれを避けるため、CLTを在来軸組工法の非構造部材である床材として扱い、建築確認を壁量計算で通しつつ、独自に許容応力度計算を行い安全性を確認している。
1階の柱と梁の上に計8枚のCLTを並べ、その上に2階の敷き土台と柱梁を建てるという工法だ。大工の手持ち工具で施工できるよう、CLTを長ネジで留め付けるのが特徴だ。
この接合部は一面せん断試験で強度を調べ、水平構面の床倍率で換算すると8相当になるのを確認した。
施工に際して問題となったのは、敷地が狭くCLTを仮置きしたり地組みしたりする場所が取れないことだ。そのため、銘建工業(岡山県真庭市)で製造したCLTを現場近くのプレカット工場にいったん預け、施工当日に現場に搬入。CLTを積んできたトラックの上で接合作業を行いながら、その日に上棟した。