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 軟弱な地盤上に建設された建物の床が沈下したことに対し、設計を担当した建築士に約3800万円の損害賠償を命じる判決が2003年12月25日、宇都宮地裁で下された。

 判決文によると、訴えたのは宇都宮市内のとちぎコープ生活協同組合で、被告は同市内の一級建築士。95年12月に竣工した同組合配送センターの土間コンクリート床の一部が、96年7月から9月までに最大10cmほど沈下した。沈下した床には多数のひび割れが発生し、建具に不具合が生じた。建物は鉄骨造平屋建て、床面積は約1780m2で、工事費は約9700万円だった。

 争点は、建築士が軟弱地盤に対応する設計・監理を行ったかどうかだ。

 敷地は沖積低地に属し、建物の建設前は水田だった。建設前に原告が地質調査会社に依頼した調査では、地表から深さ5.75mまでは軟弱な粘土や砂がたい積しており、最も軟弱な地盤でN値0.8を観測した。調査報告書は、「建物を直接基礎とするのは不適当であり、深さ7.6m以上の強固な砂れき層を支持層として杭基礎を採用すること」を推奨していた。

 建築士はこの報告書を受け、建物の基礎形式に深さ8.15mの杭基礎を採用した。ただし、杭基礎と地中梁の大部分は建物の中央部には設置されておらず、中央部の30m四方の範囲では土間コンクリート床が直接、地盤に接していた。建築士は、「報告書のボーリングデータをもとに、建築基準法施行令93条と同法建設省告示111号、日本建築学会の建築基礎構造設計指針のいずれの基準も満たす設計を行ったので、設計は適切だった」と主張した。

 しかし判決では、建物が沈下する危険性は報告書から容易に予見できたはずなのに、対策を十分に検討しなかったことは疑問だとして、「土間コンクリート床の基礎にも杭基礎と地中梁を採用していれば、床の沈下を防ぐことができた」と指摘。建築士が設計上の義務を怠ったと認めた。

 また、建築士が関与していなかった造成工事についても争われた。地質調査後に行われた敷地の造成工事は測量会社の設計・監理のもとで行われ、約60cmの盛り土が施された。建築士は「造成工事の際に盛り土の転圧が不十分だったことや、適切な土壌改良工事をしなかったことが地盤沈下の原因」と主張した。

 だが裁判所は、「造成工事での地盤沈下防止対策が不十分だったとしても、建築士は地質調査報告書によって地盤が軟弱であることを認識していたのだから、造成工事でどのような沈下対策が施されたのかを確認し、対策が十分でないと判断すれば、それを前提とする基礎構造を採用すべきだった」と判断。建築士に設計監理契約の債務不履行があったと認め、原告が請求する補修費用などの損害賠償額を全額支払うよう命じた。

 建築士は、1月上旬に控訴した。

(藤川 明日香=日経アーキテクチュア)