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 都市再生機構が1989年に分譲した東京都八王子市にあるマンションで構造耐力が不足していた問題で、冬柴鉄三国土交通大臣は都市機構の小野邦久理事長を文書厳重注意処分とした。また都市機構も、小野理事長と村山邦彦理事を2カ月間の給与10%辞退とするなど、計10人を処分した。

会見する都市再生機構の村山邦彦・技術管理・調査研究担当理事(写真:日経アーキテクチュア)
会見する都市再生機構の村山邦彦・技術管理・調査研究担当理事(写真:日経アーキテクチュア)

 問題のマンションでは、当初の構造計算書を紛失したとして都市機構が作成した再計算書や再々計算書に誤りがあることを住民側が指摘。都市機構は、瑕疵を認めた基礎以外に構造上の問題はないと説明していた。ところが今年10月、日本建築構造技術者協会の耐震レビューによって耐震強度が不足していることが明らかになったことを受け、都市機構は再々計算書に工学上不適切な判断や誤りがあったことを認めた。その後、都市機構は当初設計や再計算の関係者33人に聞き取り調査を実施した。今回の処分はその調査結果に基づくものだ。

 今回の調査で、都市機構が「工学上不適切な判断」と認めた評価方法が再々計算書に採用された経緯も明らかになった。再計算書と再々計算書を作成したのは、当初の実施設計を担当した日匠設計(東京都新宿区)だ。同社の担当者によると、再計算書を作成する段階で計算結果にNGが出たため、都市機構の担当者と相談しながら対応を決めたという。その結果、通常の新規設計で都市機構が用いない評価方法を採用してしまい、それが工学上不適切な評価方法であったとしている。

 通常用いない評価方法を採用した理由として都市機構は、構造計算に用いたコンピューターやソフトが当初設計時点と再計算時点では違っていたことなどを挙げる。「耐力不足の建物を、不適切な評価方法を採用して適法としたのではないか」との疑いについて都市機構のカスタマーコミュニケーション室の稗田昭人室長は、「再計算当時、当初設計に耐力不足があるという認識はなく、あくまで当初設計を再現するために様々な評価方法を検討した。採用した評価方法は、許容される範囲内と判断していた」と説明する。

 今回の発表で都市機構は、再々計算書の誤りを住民側から指摘された後、改修用計算書を作成していたことも明らかにした。ここでは、機構が新規設計で採用する評価方法を用いている。この点について村山理事は「機構の分譲住宅として備えるべき水準を意識して、計算し直した」と説明する。「改修用計算書作成時点で、再々計算書の評価方法が不適切だと認識していたのではないか」との問いに稗田室長は「再々計算書で採用した評価方法は、機構の分譲住宅として備えるべき水準には及ばないが、適法性の判断には用いることができると当時の担当者は考えていた」と言う。

 都市機構は、改修用計算書について住民側に一切説明していない。当時、第二東京弁護士会の仲裁センターでの和解あっせんを申し立てており、その場で説明するつもりだったが、住民側が協議に応じなかったため、説明する機会がなかったと主張する。仲裁センターでの協議にこだわった機構の対応に、住民側が不信感を募らせ、問題が長期化したことは否めない。今後、住民の不信や不安をどう払拭するか、都市機構の対応が注目される。

■都市再生機構が認めた工学上不適切な評価方法と誤り
1.袖壁付き柱の断面形状の評価について、片側の袖壁のみを考慮すべきところ、両側の袖壁を考慮した
2.大梁の長期応力の算定について、節点位置または剛域端位置で計算すべきところ、部材端位置(フェイス位置)で計算した(C、M0、Q0の補正)
3.基礎の計算において、いったんプログラム上でベタ基礎として計算して布基礎に換算した
4.大梁の計算において、T型梁のせん断耐力式の計算が不適切だった
5.梁主筋の位置の入力を誤った