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石原慎太郎・東京都知事から突然の依頼を受けた2016年東京オリンピック招致のためのグランドデザイン。今の東京に必要なことは、「成長」ではなく「成熟」という安藤氏。成熟のためのキーワードに「環境」を掲げ、緑の中に浮かぶメーンスタジアム、巨大なゴミの山を市民の寄付によって緑化する「海の森」など、東京という巨大都市を魅力的にするためのプロジェクトを提案する。安藤氏は、「これこそものづくりの真髄(しんずい)だ」と語る。

安藤忠雄。建築家、東京大学名誉教授
安藤忠雄。建築家、東京大学名誉教授

 2016年オリンピックの東京招致を目指してグランドデザインに協力してほしい─。石原慎太郎・東京都知事から、何の前触れもなく突然、要請を受けたのは、2006年5月のことでした。
 
 前回の東京オリンピックが行われた1964年は、まさに日本が一番元気な時代でした。45年の敗戦から、通常では考えられないほどのスピードで復旧復興を成し遂げた後、世界有数の経済大国にまで立て直しつつあるころです。東京オリンピックはそのような日本の姿を世界中に示す出来事でした。

 建築では、丹下健三先生が設計した国立代々木競技場を見て世界中の人々が驚きます。日本の精神と日本の技術力が現れていると。建築界においても、日本が世界レベルに達した瞬間でした。

 私は、このころの建物を見て、そのエネルギーに圧倒されたものですから、2016年のオリンピックではこのような建物を補強して使いましょうと提案しています。メーンスタジアムのみ、新たにイメージ図を描きました。緑の中にメーンスタジアムが浮かんでいるイメージです。

 多くの人々は、設計はすべて安藤がするのではと誤解されているようですが、私は、すべての施設の計画を国際コンペで決めるのが良いと考えています。再利用するものも含めて、一つひとつの施設は新しい東京の象徴ともなるべきものです。ジャン・ヌーベルやノーマン・フォスターら、世界中の著名な建築家に声をかけて、最高峰の技術を競い、知恵を集めてつくり上げていくのがふさわしいと考えています。

ゴミの山を「海の森」に

 世界の人々が日本の街に投資してくれないと日本の発展はありません。そのためにも都市をどうするか、考えなければならない。これこそ、ものづくりの真髄だといえます。

 今の東京が「魅力ある都市」となるのに必要なのは、かつて1964年東京五輪のときのようなインフラ整備による「成長」ではありません。目指すのは、肥大化した都市を制御し、環境という総合的な視点で再編成していくこと、すなわち都市としての「成熟」です。
 そのようなテーマの下、「緑の回廊=風の道」を中心とする、10年計画のグランドデザインが組み立てられています。

2016年東京オリンピックのメーンスタジアムは、緑の中に浮かぶ(資料はすべて:安藤忠雄建築研究所)
2016年東京オリンピックのメーンスタジアムは、緑の中に浮かぶ(資料はすべて:安藤忠雄建築研究所)

メーンスタジアム内観
メーンスタジアム内観

巨大なゴミの山を、市民の寄付によって緑の森に変える「海の森」プロジェクト
巨大なゴミの山を、市民の寄付によって緑の森に変える「海の森」プロジェクト