東武建設(栃木県日光市)が鉄筋の一部を切断したまま竣工させた長野県佐久市内の分譲マンション「サンクレイドル佐久平」は、耐震強度が建築基準法の基準を満たしていなかった。建て主のアーネストワンが4月10日に県に報告し、県が11日に発表した。
地上11階・地下1階建てのマンションの鉄筋のうち、主筋4カ所、あばら筋50カ所の切断が、アーネストワンと東武建設の調査で3月下旬に判明した。県はアーネストワンに、鉄筋の切断を前提とした構造計算でマンションの耐震強度を確認するよう指示した。県がアーネストワンから受けた報告によると、許容応力度計算と保有水平耐力計算の二段階で行う計算のうち、最初の許容応力度計算の段階で強度不足となった。そのため、マンションの耐震強度を表す数値として一般的な保有水平耐力比は明らかになっていない。
マンションは売買契約が解除され、居住者がいない状態で東武建設が所有。同社は解体する意向を県に申し出ている。県は申し出を受け入れ、解体時には建設リサイクルなど関係法令を順守するよう東武建設に求める方針だ。県によると、敷地の近くをJR長野新幹線が通っているため、工事の開始はJR東日本との協議を経てからになる。
東武建設は、マンションにコンクリートを打設した後で、梁に78カ所のコア抜きをして、換気設備用のスリーブ穴を開けたり開け直したりした。その際に鉄筋を切断した。設備用スリーブの設置を忘れた下請け会社からの申し入れを、現場代理人が受け入れる形で始まったという。