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 日経アーキテクチュア2008年4月28日号の特集「『コスト下手』が設計を蝕(むしば)む」では、設計者がコスト感覚を身に付けることの大切さを説いた。ここでは、特集の後半に登場してもらったベテラン技術者のアドバイスを3回に分けてお伝えしよう。詳細は誌面でぜひご覧いただきたい。

 大手設計事務所の積算技術者として長年、数多くの設計図をコストの視点からチェックしてきた正田紳一氏。現在は、日本建築積算協会の理事も務める。設計のコンセプトを見極めて、枝葉末節にこだわらないことによって、コストバランスの取れた建築ができるという。設計者が陥りやすいコスト増の原因を指摘してもらった。(日経アーキテクチュア編集部)

正田紳一氏。B・C・Aプランニング代表。1941生まれ。西松建設に入社。その後、久米設計コスト管理統括部長を経て、2001年から現職。日本建築積算協会理事(写真:本誌)
正田紳一氏。B・C・Aプランニング代表。1941生まれ。西松建設に入社。その後、久米設計コスト管理統括部長を経て、2001年から現職。日本建築積算協会理事(写真:本誌)

 設計コンセプトを見極めることがコストバランスの取れた設計を進めていくうえでは肝要だ。積算技術者も、設計者に対して「それではコストがかかる」と言うだけではなく、デザイナーとしての考え方を尊重する。建物の形状なのか、仕上げのデザインなのか。大きく分けて、そのコンセプトを生かしていく。

 そのためにも、設計者は建設コストの変動要因を知っておかなければならない。建設地域、建設場所、敷地形状(形態)・土質(地盤)、建物形態、規模、品質(グレード)、発注形態、工期・支払い、需要と供給──のようなものだ。

 例えば、建物そのものの平面計画。同じ延べ床面積でも、特殊な形状にすると、正方形の場合と比べて外壁周長が2倍になってしまうケースがある。1万円で済むとしたら、倍の2万円もかかる。それを同じ延べ床面積で割ると、平米単価は跳ね上がる。

 金属製カーテンウオールの外壁にカーブをつける場合でも、コストに影響を及ぼす。直線をつなげて円を出す場合と、完全に円にする場合とでコストは異なる。完全に円の構成にしたら、サッシフレームやガラスなどのコストが割高になる。

 それらの要因を含めて決定するのが、設計者のコンセプトだ。方立てを見せたくないのか、むしろ意匠的に方立てをたくさん付けたいのか。

 積算技術者はそのコンセプトをまず設計者に聞いて、的を射たりとなれば、「じゃあ行きましょう」となる。また、コンセプトは良くても、予算に対して膨らみ過ぎていることもある。それではお金がいくらあっても足りない。与えられた予算で設計することも、設計者の技量だ。(談)

◆詳細を日経アーキテクチュア2008年4月28日号<「コスト下手」が設計を蝕(むしば)む>に掲載しています。